サントメ料理店
2023年 12月 04日
宝くじの発売元サンタ・カーザ・ダ・ミゼリコルディア(聖なる慈悲の家)ではその収益金で福祉事業や文化活動を行う。私も時々宝くじを買うので、サンタ・カーザの主催する無料イベントにはよく参加させてもらう。これで元が取れるというものだ。今回のイベントは、バイロ・ソシアル(市営住宅などの多い地区)のウォーキングツアーで、リスボン北部にあるアメイショエイラ地区を訪れた。隣の市との境にあるアメイショエイラは地下鉄駅もあり、中心部とのアクセスは良い。しかしまだこんな所がリスボンに?と驚くような所でもある。
案内してくれたサンタ・カーザの職員ペドロさんによると、アメイショエイラは19世紀までは貴族の別荘地でありのどかな農村であったが、20世紀になると地主は土地屋敷を市に売却し、市営住宅が造成された。葦のしげる原っぱの向こうには郊外の白いベッドタウンや緑の丘陵がのぞめ、高層アパートに囲まれるようにクラシックなお屋敷や小さなチャペルもあれば、ヴィラと呼ばれる労働者の長屋や農民の住んでいた小さな家もある。現在はアフリカ系住民とシガーノ(ジプシー)系住民が多い。この2つのコミュニティは仲があまり良くない。ゆえに、リスボンでも治安の良くない地区とされている。
つましい小住宅の集まった地区にある三角の広場に、元は物置かガレージだったような白い平家のレストランがある。カンティーニョ・ダ・アメイショエイラというその店は、アフリカの旧ポルトガル植民地サントメ・イ・プリンシペの料理店で、ガイドのペドロさんのお勧めである。サントメ料理は食べた事がなかったので、ツアー終了後に入ってみた。店内はアフリカの布地や仮面が飾られ、お客さんもアフリカ系の人ばかり。もちろんアジア人は私1人である。
注文したのはカルルという魚のシチュー。以前アンゴラ料理店で食べたカルルは干した魚やオクラが入っていて、美味しかったが、サントメのカルルはどうだろう。最貧国の小さな島国の食べ物にふんだんな食材や美しい盛り付けなどは全く期待していないが… ぶつ切りの魚のアラと謎の野菜をカレーに似たとろみのある汁の中にぶち込み煮込んだものが出てきた。味はカレーほどではないが辛味があって、付け合わせのご飯ととうもろこしの餅が進む。汁には細かく刻んだ青菜やキャベツが混じり、貧しい材料ながら栄養面ではバランスが取れている(多分)。すごく苦い野菜は丸いナスの一種で、この葉っぱも汁の中に入っているそうだ。油脂はパーム油、スパイスはマラゲッタという辛い唐辛子やサントメ産の胡椒など色々使う。魚もサントメの魚を使うそうだが(ポルトガルの魚でしょう)スパイスのおかげで魚臭くはない。見た目よりは美味しいと言えよう。
貧しい島国の料理に顧客は付近の住民とあれば安いだろうと思いきや、お勘定は普通のポルトガル飯より高めの14€だった。メニューには値段が付いていないので、レシートを請求すると「メニュー 14€」としか書かれていない。頼んだのは炭酸水、カルル、コーヒーで、私は明細が知りたいのだ。いちげんさんのアジア人なので適当な値段をつけたのか、何を飲んでも食べても一律14€なのか不明。ここもモグリの脱税の店か?モヤモヤした気持ちのまま支払い、店を出たが、あの苦いナスや魚やスパイスをサントメから取り寄せているならこの値段だろうと自分を納得させた。そのうち変わったものが食べたくなったらまた来るかもしれない。
昔、現地のサマーコースに参加した折、同じクラスにサントメのラジオ局勤務の男性がいたけれど、はしゃぎまわるスペインの若者たちと距離をとりつつもフレンドリーで、いいやつだったなあ。
旧テリトリーシリーズで、今度はモサンビーク料理を、ぜひ。







