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ポルトガルの食べ物、生活、観光情報


by caldoverde
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ファリニェイラとアリェイラ

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 ポルトガルには様々な種類の肉の加工品がある。日本では見られない変わった腸詰がたくさんある。スパイスやにんにくをきかせたチョリソ。スパイシーな豚の血のソーセージ。ワイン風味のもの。お米の入ったもの。輪になったもの。太く短いもの。細いもの。膀胱?に詰めた丸いもの。全部を試してみたいけど、なかなか勇気がいる。同時に何種類かの腸詰を試したいのなら、ポルトガルの典型的な料理コジード・ア・ポルトゲーザを注文すれば最低3種類の腸詰が味わえる。一般的な、パプリカで風味をつけた赤いチョリソ、不気味な黒い血のソーセージ、そして白っぽい、ふにゃっとした正体不明の腸詰。いずれも独特の味、香り、食感を持っている。

 1番目の赤いチョリソは歯ごたえに弾力があり、ビールのつまみによく食べられるサラミに近いものがある。にんにくと赤ピーマン(パプリカ)で味をつけている。これが一番抵抗なく食べられるだろう。
 2番目の見た目の悪い黒い血のソーセージは、辛くないカレーのような風味で、フレーク状の血の中にごろっと脂身が混じっている。豚の形の陶器に焼酎を注ぎ火をつけて焼いた血のソーセージは祭りの屋台の食べ物でワインの良き友。
 そして3番目の白い腸詰は、豚の脂肪ににんにくなどの香料と小麦粉を混ぜたものでできているらしい。どこか味噌に共通した味である。初めは不気味な食感に抵抗があったが、味噌に似ていると気が付いたら、結構好きになった。自分でコジードを作った時、この白いソーセージ、ファリニェイラを半分入れてみた。腸から中身が飛び出てどろどろになってしまったが、味はなかなかいける。味噌仕立ての鍋物のようだった。

 もう一つの白い腸詰にアリェイラというものがある。こちらは様々な鳥獣の肉が使われている。食べると時々小さな骨が混じっているが、狩で取れた雉か鶉、それともうさぎの骨だろうか。ラベルを読むと猪や鹿も混じっている。これも独特のうにゃっとしたテクスチャーで、ビネガーの風味だろうか酸味がある。豚肉は使われない。この食べ物は元々キリスト教に改宗を迫られ山奥に逃げ隠れ住んでいたユダヤ人たちが、ひそかに自分たちの伝統や信仰を保つため、鳥やその他の宗教上のタブーに触れない肉で、豚肉のソーセージに似せたものを作ったということである。
 このアリェイラの料理は大抵のレストランの最も安いメニューである。このソーセージはスーパーで生のを買うとせいぜい1ユーロちょっと、レストランではこれをフライにするかグリルしたものに、フライドポテトと目玉焼き、青菜の炒め物をつけて6ユーロから8ユーロ、青菜が付かなければ4ユーロから5ユーロである。ポルトガルのレストランの料理は、これが料理か?と思えるような、一見誰にも作れそうな単純なものが多いが、このアリェイラもその一つ。しかも原価が安い。ソーセージも卵もジャガイモも菜っ葉も。ただし自宅でこの付け合せをすべてタイミングよく調理して盛り付けるのは難しいかもしれない。一人前を作ろうと思ったら、スーパーで卵は最低6個入り1パック、ジャガイモは1kgの袋、青菜大きな束になったものを買って、それぞれ別の調理器具で調理しなくてはいけない。そうすると原材料が安くとも、結局食堂で調理されたものを食べたほうが安上がりなのだ。ついでに、ポルトガルのレストランは付け合せのフライドポテトである程度店の評価が決まるらしい。冷凍ではなく生の芋を揚げたフライドポテトが食べきれないほどたくさんついてくる店は繁盛している。
 初めはあまりの原価の安さと不気味な食感に、あえて選択しようとは思わなかったアリェイラであった。ところが、あるポルトガル人女性によると、あのうにゃっとしたテクスチャーがいいのだと言う。たまたま近所に彼女が推薦するアリェイラを出す店があり、試しに食べてみたところ、実は結構気に入ってしまったのである。
 
 テクニックがさほど必要ないと思われるこの料理も、実は揚げる時に切れ目を入れて中身が飛び出さないようにするとか、前述のようにタイミングよく副菜を作るとか、実は奥深いものなのかもしれない。私は他にどんな調理の仕方があるのか知らない。ある日冷蔵庫に白菜半株が残っているのに気づき、これとアリェイラを煮込んだポトフを作ろうと思い立った。
 ナイフを入れるとブリッとした腸の中から、熱々のうにゃっとした中身が飛び出し、柔らかく煮えた白菜とえもいえぬハーモニーがかもし出されることを期待しつつ、鍋に湯を沸かし、白菜半株とアリェイラ、塩少々をぶち込んだ。待つこと十数分。次第にいいにおいが漂って来た。期待に胸膨らませつつ鍋の蓋を開け、おたまじゃくしでソーセージをすくった。
 「あれ?」ちっこい。元の大きさの4分の1以下だ。中身が腸の中から飛び出して、すっかり縮んでいる。白菜とアリェイラをゆでている湯は薄赤く染まり、ふわふわした正体不明の物体が浮遊している。パーンと張った胴体にフォークを刺してブツッ、ナイフを当てればパリッ、そして口の中に肉汁ジュワッという予測はみごとに裏切られ、以前ファリニェイラで作ったコジードと同じく、ポトフは分けのわからないものになっていた。
by caldoverde | 2007-04-06 07:42 | 肉料理 | Comments(0)