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ポルトガルの食べ物、生活、観光情報


by caldoverde
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カタツムリ(カラコイス)

「カラコイス(カタツムリ)あります」リスボンのバールやレストランに時々でんでん虫のポスターが貼られている。初めの頃はポルトガルにもエスカルゴがあるんだと考えていた。ブドウの葉っぱで育てた、小さめのサザエくらいの貝に香草を利かせたバターを詰めて、薫り高いワインで蒸し焼きにした高級料理がここでも食べられるのかと思っていた。

 田舎とはいえヨーロッパに来たからには西洋料理のエッセンスを味わってみなければ、という意気込みと、まさか日本の梅雨時によく出没する、葉っぱの陰にへばりついたねばねばした気味の悪いあの軟体動物とは別種だろうという漠然とした思い込みが、私に「カラコイス」を注文させた。場所はリスボン、アルファマ地区のカテドラルの近くの何の特徴もないバールであった。

カタツムリ(カラコイス)_a0103335_1115188.jpg

 生ビールとともに「カラコイス」がやってきた。コーヒーメーカーの社名の入ったコーヒーカップの受け皿にこんもりと積み上げられた「カラコイス」はでんでん虫そのものだった。せめて、ホッキ貝くらいの大きさの身が入った大型のものだろうと言う期待は見事に覆され、指の先ほどの可愛いカタツムリだ。
 しかも、童謡に歌われているように「ツノ出せ、槍出せ、目玉出せ」の生前のお姿そのままの状態に茹で上がっている…これは完全に予想外だった。カタツムリも釜茹でにされるときは角や目は引っ込めるだろうと何の根拠もなく信じていた。なのに、ぴょーんと伸びた先にちっちゃな目玉がついている!こ、怖い。

 爪楊枝が何本か添えられている。これで身をつつき出すのだ。可哀そうなのを堪え、折れやすい爪楊枝で何とかほじくり出すと、黒っぽい奥のほうの身がくるんと丸まって出てくる。殻から出された哀れな裸のカタツムリ、これがまた気持ち悪い。

 注文したからにはちゃんと食べてあげなくては成仏できまい。自分も無益な殺生をしてしまうことになる、と勇気を振り絞って食べた。ひとつ食べればだいぶ恐怖心は薄らぐ。なるべく間をおかず、必死でカタツムリの殻から身を取り出しては口に放り込む作業に没頭した。食べているうちに味も感じるようになった。一心不乱にカタツムリと格闘し、小さな受け皿に盛られた全ての殻を空けたのは約1時間後だった。心の底から安堵を感じた。

 後で友人にこのことを話すと、カタツムリの中には阿鼻叫喚さながら口を開け、歯まで見えているものもあったという、友人のそのまた友人の「カラコイス」体験談を語ってくれた。そんなことを事前に聞いていたら注文しなかっただろう。

 要は文化の違い、何を食べ物と見るかの違いである。日本人がイナゴを食べるようなものである。イナゴの佃煮にはちゃんと目があり、ひげがある。カタツムリも然り。ポルトガル人にとってはカタツムリが目を出していようがいまいが味に変わりはないのだ。稲を食い荒らす害虫のイナゴを蛋白源として利用した日本人と同様、ポルトガル人も畑の作物を食い荒らすカタツムリを食べたら一石二鳥であると考えたのだろう。コインブラ郊外の野原に異常発生しているカタツムリを見たことがある。そこかしこの稲のような細長い草の茎に何十個もびっしりとカタツムリが鈴なりになっている。ひょっとして枝葉もあったのをカタツムリがすっかり食べ尽くしたのかも知れない。これだけの数がいれば食用にと考えるのも無理のないことである。

 カタツムリを調理するには、数日前から小麦粉を食べさせ、お腹のものをだしてきれいにする。そして余分なものを排出したカタツムリは唐辛子やニンニク、月桂樹などとともに茹でられて、ビールのつまみになる。ちょっとピリッとしていて形を見なければ美味しい。手持ち無沙汰なときとか、店のテレビでサッカーを見るときとか、できるだけ長居をしたいときに注文するとよい。

 めったにお目にかからないがカタツムリを豆と一緒に煮込んだフェイジョアーダ・デ・カラコイスという料理もある。これもまた食べるのに時間のかかりそうなメニューである。一人で食べる姿を想像するとなんだか侘しいけど、複数で食べると性格を占ったりできそうで面白いかもしれない。面倒なカタツムリに手をつけない人、カタツムリを選別する人、豆だけ拾って食べる人、他のものと同時進行で食べる人、他の人に殻をとってもらう人等、食べ方によって性格がうかがい知れそうだ。付き合って間もないカップルのデートのメニューにいかがでしょう。

 もし、カップルがカタツムリを食べていたら、チュウチュウと耳障りな音が聞こえてくるかもしれない。こんなところでまで仲が良いことを見せつけなくたっていいのに、と腹を立てちゃいけない。彼らはカタツムリの殻の奥の身を吸い取っているのだ。それが上品なマナーなのかどうかは知らないが。

Commented by おっちゃん at 2007-05-27 06:57
先日雑誌にサザエをエスカルゴ風に調理するやり方が載っていて、ほぅ、うまそうな!と思ってみてたら、今度はこの話題(笑)。
カタツムリの塩茹でですか?しかも山盛り。日本でも気をつかう上司の送別会などは蟹を食べに行けといいます。みんな黙々と蟹をほじるので会話が弾まなくても不自然じゃないから。
きっとどこかにあるカタツムリ農場に思いをはせてしまいました。ヌメ〜。
Commented by caldoverde at 2007-05-27 07:44
カタツムリを盛る皿、小さいんですが、初めて食べた時はほじくれどほじくれど減らなくて泣きたくなりました。嫌いな上司の送別会に大盛りのカタツムリなど良いかもしれません。
Commented by ショー at 2007-05-28 01:03
ほんとほんと、目玉出てますね。あれが恐くて私もまだ未経験です。こちらの人は皆、美味しいといいますねー。ところでエスカルゴは目玉飛び出ていないけど、切っているのかしら?
Commented by caldoverde at 2007-05-28 01:45
目玉を切る?!それもかわいそうだー!!
カラコイスの大型のカラコレッタってエスカルゴのことでしょうか?
この種類は目玉を出さないとか?
Commented by yuko at 2007-06-01 21:54
カレコレータには目はないんじゃないのかな?海の貝や
エスカルゴと同じで。
前食べたけど出てなかったし・・
でもカラコイス以上に鼻水度が高く、もう二度と食べないと
固く心に誓ったのであった
Commented by おっちゃん at 2007-06-01 23:38
鼻水度ってアナタ…、スゴイ言葉に驚きました。貝のような食感ではないのですか?ヌルヌルなのですか?精がつく食べ物なのかも?
Commented by caldoverde at 2007-06-02 23:19
鼻水度を測る基準は何ですか?あんまりうますぎて滂沱を流す度合い、それとも殻の中身が・・・ああっ想像したくない!
Commented by yuko at 2007-06-05 22:16
殻から出すとぬめぬめと、口に入れるとぬるぬると・・
糸引くんだもん
Commented by おっちゃん at 2007-06-06 13:59
あ〜っ、食べたこともないのに、その感触わかる気がする自分が怖い。ぞぉ〜。
Commented by caldoverde at 2008-10-30 08:03
サンタレンのフェイラ・デ・ガストロノミア(全国うまいもの市)でカタツムリのよだれクリーム(顔用)20ユーロを買ってしまった。カタツムリのネバネバ成分は何とか酸という高分子体で水分を保つ性質があるということです。シミ・シワに効くわよと無理やり顔につけさせられましたが、予想に反し、ごく普通のクリームでした。ネバネバはありません。しかし、どうやってネバネバを抽出するんだろう?
Commented by Moreia at 2008-10-30 10:44
食べて良し、肌に良しのカラコイス、脂肪も無いのでダイエットにいい蛋白源として、いつか日本にもカラコイス・ブームがやってくるのもそう遠くないことでしょう(来るか、そんなもん!)
ネバネバの抽出は、やはり大量にガラス箱の中に放置して「たら~りたらり」と流れた汁を集めているのか?(ガマの油みたいに)・・・それとも一気にミキサーにかけてカラコイス・ジュースにしてからエッセンスを抽出しているのではないでしょうか。クリームの効果やいかに???
by caldoverde | 2007-05-27 01:20 | スープ・前菜・酒肴 | Comments(11)