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ポルトガルの食べ物、生活、観光情報


by caldoverde
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豆腐チーズ

 ポルトガルからの輸入食品がどんなに普及したとしても、多分日本では食べられないものに生チーズがある。ケイジョ・フレスコ、直訳するとフレッシュチーズという名のチーズと、リケイジョンというカテージチーズみたいなものの2種類ある。2つのチーズとも醗酵臭はなく、塩味のミルクが固まったような、淡白な味である。

 ケイジョ・フレスコは直径5cmほどの小さな円筒形のカップに入っており、滑らかな絹ごし豆腐のような舌触り。脂肪分の多いもの、中くらいのもの、少な目のものの3種類ある。ほとんどが牛乳だが、まれに山羊や羊の乳から作られるものもある。このチーズは、よくレストランで前菜に出される。日本人の中にはスプーンを使いチーズをカップからすくって食べようとなさる方もいらっしゃるが、プッチンプリンの要領でカップをひっくり返して、お皿の上に出してフォークとナイフでいただくのが正しい。ポルトガル人は塩と胡椒をふって食べる。見た目も舌触りも豆腐そっくりなのでわさびをのせて醤油をかけてもいけそう。

 リケイジョンは直径10cmほどで、ケイジョ・フレスコのようなプラスチックの容器に入ったもの、紙に包まれてるもの、小さなざる状の入れ物に入っているものなど包装の形態は様々である。食感は木綿豆腐か水分の多いおからの様な感じである。脂肪分は少ない。これも牛乳のほかに山羊乳、羊乳のものがある。リケイジョンのかぼちゃジャム添えは近所のレストランのデザートメニューだ。ポルトガル最高峰エストレーラ山系のふもとセイアという町から取り寄せた羊の生チーズにオレンジ色のかぼちゃのジャムをかけたものだ。チーズの軽い塩味がジャムの甘みを引き立て、ミルクの優しい風味と調和する。チーズもジャムもスーパーで買ったものとは味が違う。たぶん大工場製ではなく家内制手工業によるものなのだろう。凝りに凝って作られたデコラティヴなデザートにも引けを取らないおいしさだ。これは近所のワインバーのおつまみのリケイジョンのトマトジャム添え。盛り付けがおしゃれだ。
豆腐チーズ_a0103335_738030.jpg
 暑くて火を使う料理をする気が起きないとき、私はこんなズボラ料理を作る。イタリア料理のサラダによく登場するルッコラにゴマだれをあえ、真ん中に山羊のケイジョ・フレスコをでーんとおいて、その上にイチジクのジャムをかける。ルッコラはゴマのような香りがするので当然ゴマとよく合う。ゴマだれはすりゴマに醤油、砂糖、みりんを適当に合わせる。あればくるみか松の実を添えたい。前菜とデザートを兼ねた甘いサラダで、冷やした白ワインとともに食す。
豆腐チーズ_a0103335_7352123.jpg
 生チーズを使ったケイジャーダというお菓子はポルトガル各地にある。有名なのはシントラのケイジャーダで、ガイドブックにもよく載っている。しかし私が好きなのはエヴォラのケイジャーダである。シントラのはチーズの味や香りより、圧倒的にシナモンの香りが勝っている。それにすごく甘い。京都の八橋の好きな方には勧める。一方エヴォラのほうはマドレーヌのようなしっとりした生地にほんのりミルクの香りがして、チーズケーキらしい味がする。エヴォラのケイジャーダには2種類あって、ふちが正円のプリンをひっくり返したような形のはケイジョ・フレスコを使い、ふちが花のようにでこぼこのある型で焼いたのはリケイジョンを使っている。エヴォラのガイドさんによるとケイジョ・フレスコを使ったものはこってりして、花形のリケイジョンのはあっさりしているということだ。シントラもエヴォラもユネスコの世界遺産の町である。美しさもお菓子の美味しさも優劣つけがたい。この2つの町を訪れたなら、ぜひともケイジャーダを食べ比べてください。
by caldoverde | 2007-07-13 07:42 | スープ・前菜・酒肴 | Comments(0)