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ポルトガルの食べ物、生活、観光情報


by caldoverde
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さくらんぼのお酒(ジンジーニャ)

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 リスボンのロシオ広場の北側は国立劇場が占めているが、その劇場に向かって右側の角の帽子店の陰にサクランボのリキュール、ジンジーニャ専門のバーがある。店の広さは1坪位だろうか、カウンターがあり、おじさんが「コン?セン?」と客に聞き、毛むくじゃらの太い腕で小さなコップに甘ーいルビー色の酒を注いでくれる。コンとはコン・フルッタ(果実入り)センは(果実無し)と言う意味である。コンを頼むと何個かサクランボが入る。店の周辺では小さなコップを手にした地元の人や観光客がこの強い甘い酒を愛おしそうに飲んでいる。
さくらんぼのお酒(ジンジーニャ)_a0103335_330697.jpg

 このジンジーニャで有名なのは、中世の城壁の村、オビドスである。リスボンから車で1時間半ほど、田園の中に浮かぶひょっこりひょうたん島のような形の丘はぐるりと城壁に囲まれ、その中に青や黄色の縁取りのある白い家が肩を寄せ合い、壁や窓辺にはバラ、ベゴニヤ、ブーゲンビリアの花々が彩を添える、ポルトガル屈指の美しい可愛らしい村である。この地方は果物の栽培が盛んで、また良質のサクランボが取れるのでサクランボのリキュールが名物になっている。村のメインストリートには土産物屋やバールが並び、様々な瓶に入ったジンジーニャが売られている。
 もうひとつの名物、というか、この村が観光の目玉として力を入れているのはチョコレートである。秋にチョコレート祭りなるイベントが行われ、チョコでできた彫刻のコンクールが開かれ、チョコレート菓子を売る屋台がずらりと並び、村はチョコの香りでいっぱいになる。そのチョコとサクランボのリキュールを合体させた私のような甘辛両党人間にとって夢のような物がオビドスには2つある。ひとつは小さなチョコのコップに注いだジンジーニャ。あま~いリキュールを飲んだ後のコップはそのまま食べられる。もうひとつはチョコレートを溶かし込んだジンジーニャである。一見普通のジンジーニャと同じような瓶に入っているが、瓶は黒くて中身は見えない。コップに注ぐとココアのような液体がトロ~と出てくる。薫り高いカカオとサクランボの味と香りが一体となった、ものすごくリッチなリキュールである。アルコール度数も高いので、男性が女性を落としたい時、食事の最後にこのリキュールを勧めたら成功率が高まるのではないだろうか。一瓶を数日で空けてしまった私には無効だが。

 先日旅行したアソーレス諸島には牛乳のリキュールがある。白ワインのような色の牛乳リキュールは確かに芳醇なミルクの香りがして、健康的なイメージの牛乳と、大人の嗜好品であり飲みすぎると悪酔いするリキュールとの融合が意表をつく。黒豚のふるさと、アレンテージョ地方には豚の餌のどんぐりのリキュールがある。飲むのは人間様である。ポルトガル最南部のアルガルベ地方ではアーモンドのリキュール、アマルギーニャが造られている。中央部のベイラ地方は数種類のナチュラルハーブを原材料としたリコール・ベイランというお酒がある。いずれも甘ったるく、アルコール度数が高い。

 辛い食後酒としては、アグアルデンテと呼ばれる焼酎がある。バールでおじさんが小さなブランデーグラスで飲んでいる無色透明の酒だ。食後のコーヒーと一緒にこの焼酎を頼む人もよくいる。消化に良いのだそうだ。安くて、臭くて、ブームになる以前の日本の焼酎のように酔うことが目的で飲まれるような酒で、たいして旨いものではない。チョリッソを焼くときに楕円形のチョリッソ皿にアルコール代わりにこの焼酎を注いで火をつける。ところがオークの樽で熟成された琥珀色の古いアグアルデンテ(アグアルデンテ・ヴェーリャ)は、ブランデーのような芳醇な香りと味で、良い物はとても高価だ。最も高級なものは、ミーニョ地方のヴィーニョ・ヴェルデ(緑ワイン)から作られるアグアルデンテだそうだ。

 ポルトガルの食後酒には、世界的に有名なポートワインの外にも地方独特のものが色々あるので、ポルトガルを旅行したら宿泊しているホテルのバーで、その土地のお酒を注文してみては。酩酊しても迷子になったり、行き倒れになる心配がない。私はアソーレスのホテルのバーで牛乳と桑の実のリキュールを飲んだ。それぞれ1杯1ユーロ50セントであった。
Commented by かずま at 2007-08-27 21:42 x
とてもおもしろかったです。(今日見るのがはじめてじゃ)KAZUMA MIYAMOTO
Commented by caldoverde at 2007-08-28 00:12 x
かずまくん、上の写真は心霊写真じゃないよ。ガラスに後ろの人が映ってるんだよ。
Commented by おっちゃん at 2007-08-28 22:59 x
日本でも梅酒をはじめ色々な自家製酒を作る人々がいるが、あれを家族以外の人に飲ますと違法って、知ってました?自家製酒を売り物にしていた民宿だかペンションに手入れが入って、客に提供していた酒をみな廃棄させられることになったと、前にニュースで見ました。色々理由はあるんだろうけど、ポルトガルに比べると寂しい話ですね。
Commented by caldoverde at 2007-08-29 04:49 x
自家製の酒は酒税法に引っかかるんでしょうね。だから原料の配合を変えてビール風にした発泡酒が流行るんでしょう。ビールの成分の大部分は水で、値段の大部分は税金。ポルトガルのスーパーの冷えていないビールを買うとすごく安いです。ところでポルトガルの消費税は21%!でも食品は税率が低いです。食事中に飲むワインは食品と見なされるので、安いほうの消費税が適用され、嗜好品のポートワインは贅沢品なので一般の21%の税率が適用されると聞いたことがあります。日本の消費税はまだ5%?
Commented by ちゅんち at 2007-08-29 06:05 x
いわゆる、ドブロクでしょうか。昔は、作っても違法だった気がしますが、
それがオープンになっても家庭消費用オンリーなんですかね?詳細は覚えてませんが、中一の終わりの春休み、理科実験の好きだった私は、イースト菌などを元にアルコールを作成し、これは違法なのだ?!と思いつつ飲んだ覚えがあります。
ところで、アソーレス日記は、完結なのでしょうか?
Commented by caldoverde at 2007-08-29 17:58 x
アソーレスで食べたものは、他にはカジキマグロのステーキとか、赤魚の焼いたのとか、特におおっと驚くようなものがなかったので、いつか別の島に行ったときにまた続きを書きたいと思います。MOREIAさんが食べたフジツボはぜひ試したいと思います。
Commented by miwakof at 2007-08-29 23:43 x
お久しぶりです。このブログ、人生の楽しみの一つとさせていただいています、って大げさですが、本当に楽しみ。
我が家で造った梅酒は、チェコの友人知人たちにとても好評です。お土産にずいぶん使いました。が、飲ませても、商売にしなければ、手が後ろに回ることはないんでしょうか。。。今頃不安に。
そんな話を読みながら、子どもの頃秋田にいたとき、父親が仕事柄もらってきた手ぬぐいに「密造酒 なくしてにっこり 良い家庭」って、あったのを思い出しました。
Commented by MOREIA at 2007-08-30 01:53 x
ん?呼びました?
フジツボはトマトとピーマンを入れて煮てありましたよ。ファイアル島の北側の方でしたが、場所が思い出せないです、すいません。

私も、こっちで何回自家製のワインやアグアルデンテ、リキュールをもらったかわかりません。最近は自家製蜂蜜をもらいました。そのあと、北部で自分ちの養蜂箱の蜂に刺されて死んだ人の話が、ニュースになってました。自家養蜂って命がけやな・・・(汗
そーいえば、大昔の話ですが、べレンの路上商人のおじちゃんが「今日は凄く売れた」ってんで、お礼に(?)自家製のヴィーニョ・ヴェルデをもらいましたが、すっげーうまかったです。だはは・・・
「密造酒 もらってにっこり 超ラッキー」ですよ。
by caldoverde | 2007-08-27 03:46 | 酒・ワイン | Comments(8)