ポルトガルの食べ物、生活、観光情報


by caldoverde
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ヤギと羊

 大学の町コインブラの郷土料理にシャンファナというヤギのシチューがある。ヤギの肉を赤ワインで煮込んだもので、黒い陶器の器でサービスされる。黒い土鍋に入った黒いシチュー。なんだかヤギの頭を持つサタンが執り行う黒ミサで悪魔の崇拝者たちが食べるご馳走のようである。この料理も決して見栄えのいいものではないが、見かけよりずっと美味しい。土鍋でじっくりと煮るので肉は柔らかく、想像するような臭みは全然ない。
 
 アレンテージョ地方には羊のシチュー、エンソパーダ・デ・ボレーゴがある。この地方は黒豚が有名だが、羊も沢山飼われている。羊は乳、毛、皮、肉と生まれてから死ぬまで人間に多大な貢献をしている。アレンテージョの羊飼いは羊の毛皮で作った上着を着る。この姿を羊たちはどう思っているのだろうか。自分たちを屠り皮をはぐ恐ろしい支配者、それとも自分たちと同じ毛皮を着ている仲間だと親近感を抱いているのだろうか。きっと後者だろう。アレンテージョの人たちはのんびり屋でよく冗談の種にされる、羊のように穏やかな人々だ。彼らは手塩にかけて育てた羊が食卓に上るとき、こいつはいいやつだったなあ、呼ぶとすぐにやって来たもんだ。毛を刈るときは暴れたが、その毛は玄関の敷物になっていつもオラを迎えてくれる・・・などと思い出を語りながら舌鼓を打っているに違いない。(多分)
 慎ましい暮らしのアレンテージョの人々は、少ない肉でも家族全員の胃袋を十分に満たすように工夫した。羊のシチューの具の半分を占めているのは揚げたパンである。この地方独特の、もっちりした拳骨のような形のパンをスライスして揚げた、巨大なクルトンが羊肉よりもその存在を主張している。上げ底だ、騙されたと怒らないで欲しい。肉やトマト、玉ねぎなどの野菜のうまみが凝縮されたスープを吸った揚げパン、これがうま~いのだ。肉も美味しいけど、私はパンのほうが好きなくらいである。
 羊の独特の臭いが嫌いだという人もいる。しかしほろほろと崩れるくらい柔らかく煮込んだ羊肉シチューはコリアンダーやミントをあしらって香りのアクセントをつけているので、臭いはそれほど気にならない。
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羊肉の下にはベッドのマットレスのように揚げパンが敷かれている。緑の葉っぱはコリアンダー。

 羊料理に合うのはやはりアレンテージョの赤ワイン。アレンテージョは良質のワインを生産していることでも名高い。エヴォラ、エストレモス、レゲンゴス、ボルバ、ポルタレグレなどの町には幾つものワイナリーがあってピンからキリまでの値段の、しかしどれもそれなりに美味しく飲めるワインを造っている。アレンテージョのワインは軽快で甘みを感じる飲み易いワインだ。高いものは重くコクがあるが、私はぐいぐい飲める安いもののほうが好きだ。私は食べるのは好きだが美食家ではない。食費に出せる金額には限界がある。少ない予算の中で旨いものを食べるということが最重要課題である。そして安くても旨いものに出会える機会の多いのがポルトガルである。特にポルトガルのワインは値段の割りに良質だと思う。
 ワインを選ぶ目安のひとつはラベルに醸造業者の名前があるかどうかである。自分の名前を出すくらいならそれだけ自信があるんだろうというやや薄弱な根拠である。しかし、この人が造っているワインならほぼ間違いないと思われるのは、JOÃO PORTUGAL RAMOS という醸造業者による、アレンテージョのワインである。ボルバのMARQUES DE BORBA や、エストレモスの LOIOS などの銘柄を手がけている。値段もスーパーで買えば6ユーロ程度の手ごろな値段である。もっとも普段は2~3ユーロのワイン愛飲者の私にとって、これらは臨時収入が入って奮発するときだけに買う贅沢品であるが。
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Commented by おっちゃん at 2007-09-27 00:03 x
何のためにポルトガルくんだり(失礼)に住んでいるのかと思っていたけど、やっぱり食べ物の魅力に惹かれていたのですね、貴女の場合。普通ただポルトガルにいただけで、こんなに食べ物に詳しくなるもんじゃないでしょうに。
羊は旧約聖書の昔から欧州人の心とお腹の、まさに腹心の友だから料理も奥が深いのでしょうね。ジンギスカン鍋しかない日本とは大違いです。
Commented by caldoverde at 2007-09-28 16:29
最初に覚えたポルトガル語の単語は食べ物関係、原語で読める本といったら料理の本やレストランのガイドブックばっかりですから、そう思われてもしょうがないか。
こちらでは昔は羊の脳みそも食べていましたが、今は禁止されているそうです。さすがに脳みそはどんなに美味しいといわれてもダメかも。
下の仔豚の脳みそはスーパーで売っていました。最近脳細胞が減少気味なので、食べたほうがいいかなあ。
Commented by おっちゃん at 2007-09-29 00:02 x
何故羊の脳みそは禁止になったんでしょう?狂牛病の影響ですかね?
Commented by caldoverde at 2007-09-29 15:24 x
もともと狂牛病のような病気は羊にあったそうです。狂牛病が人間にも感染することが判って禁止されたんではないでしょうか。
私は鱈の白子とかああいう形のものは苦手です。そういえばポルトガル人はたらこは食べるけど、白子は見たことないなあ。
by caldoverde | 2007-09-26 07:23 | 肉料理 | Comments(4)