アンゴラ料理
2008年 02月 17日
かつてポルトガルはアフリカに広大な植民地を持っていた。そのひとつ、アンゴラの料理を食べさせる店が、リスボンのアルカンタラ地区にある。4月25日橋のたもとのこの地区は以前は工場や倉庫が立ち並ぶ労働者の町だった。今は古い工場が高級なコンドミニアムに変身したり、川沿いの赤レンガ倉庫はしゃれたレストランやバーに改装され、週末は若者たちで明け方まで賑わうウォーターフロント(ドッカスと呼ばれている)になったりと変貌著しいところであるが、まだ下町の面影も残っている。アンゴラ領事館のある真新しいレジデンスの向かいには、昔の倉庫か工場だったのか、何件か飲食店の入った煤けた建物がある。
この建物の中に入り口がことさら安っぽくて、汚い字で書きなぐったメニューの紙を張っているレストランがある。名前をモアンバという。名前の感じからして、ひょっとして椅子代わりに椰子の繊維で編んだござが敷かれていて、怪しげな動物の置物やおどろおどろしい仮面が飾ってあり、BGMはアフリカの奥地の村祭りの太鼓がどんどこどんどこ鳴り響いて、派手な民族衣装を着けたスリーサイズ100・65・100のミスアフリカがぶりぶりヒップを振りながら給仕しているのではと思いきや、意外に内装はごく普通のポルトガル料理店ですっきり清潔な雰囲気である。アフリカらしいものといえば地味なアフリカの風景を描いた絵や、人の顔や動物を彫った木彫のレリーフぐらいで、シマウマ模様の家具などはない。
客は私と友人の漫画家ヤマザキマリさん(ブログ「モーレツ・ポルトガル暮らし」参照)を除いては全員ポルトガル人、それも比較的身なりのいい年配の人が多い。何も知らずに入ったら、アフリカ飯屋とは誰も思わないだろう。それでもウェイターはやはりアフリカ系の人で、今どき珍しい70年代風アフロヘアのお兄さんだった。
客用のメニューも読みにくい手書きの文字で書かれている。おなじみのポルトガル料理もあるが、ここは絶対珍しいアンゴラ料理を食べるべきだ。ところが何と読むのか、どういうものなのかほとんど判らない。店名のモアンバというのは料理の名前で、鶏肉を使ったもの、カルルというのは魚を使ったものであるらしい。この二品を注文することにした。
私は普段料理を待つ間は、お腹を膨らませないためにパンには手を出さないようにしているが、この日は別であった。小皿の上にはチーズやバターの他に見慣れない小さな瓶詰めがある。ピーナツと唐辛子をすりつぶして練ったものらしい。香ばしいピーナツバターに唐辛子がピリッとアクセントを利かせている。アフリカのピーナツ味噌はパンに付けたら何個でもいけそうだ。
70年代ソウルシンガー風ウェイターが最初に運んできた2つの皿の1つは黄色いかたまり、もうひとつは半透明の灰色のかたまりだった。両方ともキャベツ位のかさがある。黄色いほうはとうもろこしの粉、灰色のほうはマンジョッカ芋の粉を練ったものだそうだ。イタリア生活の長いヤマザキさんはすぐ黄色をポレンタと同じものだと気がついた。マンジョッカの方はくずもちのような粘りと弾力があって、黒蜜をかけたらうまそうだ。どちらも味はついていない。

そして土鍋が運ばれてきた。鮮やかな赤いとろみのある汁に白身魚の切り身、そしてオクラが入っている。カルルという料理である。ポルトガルの干鱈よりも硬く干し上げた魚と、生鱈に幾分塩をした甘塩鱈のような塩梅の魚の2種類が使われている。赤いスープには干した魚からだしがでて美味である。いかにも辛そうな色をしているが、実はほとんど辛くなく、好みで唐辛子オイルを加える。スープのとろみはたっぷり入ったオクラのネバネバから由来するものだろう。これを付け合せのポレンタやマンジョッカくずもちにかけて食べると、いくらでも食べられる。とは言えメインの魚の煮込みだけ食べてもお腹いっぱいになる量である。
次に鶏肉の煮込み料理、モアンバが来た。これも土鍋に入った赤いシチューである。かなりの大きさのぶつ切りの鶏肉がごろんと数切れ、普通の人ならこれだけで十分満足できる。味は基本的に魚の煮込みと同じだが幾分あっさりしている。これにもオクラとホウレンソウのような青菜が入っていて、赤と緑の鮮やかなコントラストがまた食欲をそそるのだ。しかしこの量は2人の日本人女性の胃に余るものだった。私たちは半分残ったモアンバやカルル、ポレンタ、くずもちをテイクアウェイできないか交渉したが、店に持ち帰り用の容器がないということで断念した。
モアンバもカルルも汁だけをポレンタやくずもちにかけると何杯でもお代わりができる。きっと昔の王様や酋長は魚や肉のいいとこだけ食べて、家臣はオクラや青菜をポレンタとともにいただき、下々の者は汁だけをマンジョッカのくずもちにかけてお腹を膨らませ、辛い労働に耐えていたのではないだろうか。アフリカ系のスポーツ選手のあの体力と粘りは、黒人歌手の伸びのある歌声は、先祖代々食してきたこのようなネバネバ系の食べ物から培われたものかもしれない。
このマンジョッカにきな粉と黒蜜をかけて食べたい

この建物の中に入り口がことさら安っぽくて、汚い字で書きなぐったメニューの紙を張っているレストランがある。名前をモアンバという。名前の感じからして、ひょっとして椅子代わりに椰子の繊維で編んだござが敷かれていて、怪しげな動物の置物やおどろおどろしい仮面が飾ってあり、BGMはアフリカの奥地の村祭りの太鼓がどんどこどんどこ鳴り響いて、派手な民族衣装を着けたスリーサイズ100・65・100のミスアフリカがぶりぶりヒップを振りながら給仕しているのではと思いきや、意外に内装はごく普通のポルトガル料理店ですっきり清潔な雰囲気である。アフリカらしいものといえば地味なアフリカの風景を描いた絵や、人の顔や動物を彫った木彫のレリーフぐらいで、シマウマ模様の家具などはない。
客は私と友人の漫画家ヤマザキマリさん(ブログ「モーレツ・ポルトガル暮らし」参照)を除いては全員ポルトガル人、それも比較的身なりのいい年配の人が多い。何も知らずに入ったら、アフリカ飯屋とは誰も思わないだろう。それでもウェイターはやはりアフリカ系の人で、今どき珍しい70年代風アフロヘアのお兄さんだった。
客用のメニューも読みにくい手書きの文字で書かれている。おなじみのポルトガル料理もあるが、ここは絶対珍しいアンゴラ料理を食べるべきだ。ところが何と読むのか、どういうものなのかほとんど判らない。店名のモアンバというのは料理の名前で、鶏肉を使ったもの、カルルというのは魚を使ったものであるらしい。この二品を注文することにした。
私は普段料理を待つ間は、お腹を膨らませないためにパンには手を出さないようにしているが、この日は別であった。小皿の上にはチーズやバターの他に見慣れない小さな瓶詰めがある。ピーナツと唐辛子をすりつぶして練ったものらしい。香ばしいピーナツバターに唐辛子がピリッとアクセントを利かせている。アフリカのピーナツ味噌はパンに付けたら何個でもいけそうだ。
70年代ソウルシンガー風ウェイターが最初に運んできた2つの皿の1つは黄色いかたまり、もうひとつは半透明の灰色のかたまりだった。両方ともキャベツ位のかさがある。黄色いほうはとうもろこしの粉、灰色のほうはマンジョッカ芋の粉を練ったものだそうだ。イタリア生活の長いヤマザキさんはすぐ黄色をポレンタと同じものだと気がついた。マンジョッカの方はくずもちのような粘りと弾力があって、黒蜜をかけたらうまそうだ。どちらも味はついていない。

そして土鍋が運ばれてきた。鮮やかな赤いとろみのある汁に白身魚の切り身、そしてオクラが入っている。カルルという料理である。ポルトガルの干鱈よりも硬く干し上げた魚と、生鱈に幾分塩をした甘塩鱈のような塩梅の魚の2種類が使われている。赤いスープには干した魚からだしがでて美味である。いかにも辛そうな色をしているが、実はほとんど辛くなく、好みで唐辛子オイルを加える。スープのとろみはたっぷり入ったオクラのネバネバから由来するものだろう。これを付け合せのポレンタやマンジョッカくずもちにかけて食べると、いくらでも食べられる。とは言えメインの魚の煮込みだけ食べてもお腹いっぱいになる量である。
次に鶏肉の煮込み料理、モアンバが来た。これも土鍋に入った赤いシチューである。かなりの大きさのぶつ切りの鶏肉がごろんと数切れ、普通の人ならこれだけで十分満足できる。味は基本的に魚の煮込みと同じだが幾分あっさりしている。これにもオクラとホウレンソウのような青菜が入っていて、赤と緑の鮮やかなコントラストがまた食欲をそそるのだ。しかしこの量は2人の日本人女性の胃に余るものだった。私たちは半分残ったモアンバやカルル、ポレンタ、くずもちをテイクアウェイできないか交渉したが、店に持ち帰り用の容器がないということで断念した。
モアンバもカルルも汁だけをポレンタやくずもちにかけると何杯でもお代わりができる。きっと昔の王様や酋長は魚や肉のいいとこだけ食べて、家臣はオクラや青菜をポレンタとともにいただき、下々の者は汁だけをマンジョッカのくずもちにかけてお腹を膨らませ、辛い労働に耐えていたのではないだろうか。アフリカ系のスポーツ選手のあの体力と粘りは、黒人歌手の伸びのある歌声は、先祖代々食してきたこのようなネバネバ系の食べ物から培われたものかもしれない。
このマンジョッカにきな粉と黒蜜をかけて食べたい

ここのところ、誰も行こうといって乗ってくれなかったアフリカ料理に行ったのですね。
モアンバは、すごく昔に食べてもう一度食べたいと思いつつ12年半が過ぎって感じですが。
やっぱりネバネバは身体に良いのでしょうか。家の近所でも良く売ってるし。(アフリカ系の人も多いので)。逆にポル人にオクラはどうやって食べるのだ?と聞かれたこともありましたけど...
モアンバは、すごく昔に食べてもう一度食べたいと思いつつ12年半が過ぎって感じですが。
やっぱりネバネバは身体に良いのでしょうか。家の近所でも良く売ってるし。(アフリカ系の人も多いので)。逆にポル人にオクラはどうやって食べるのだ?と聞かれたこともありましたけど...
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オクラは軽くゆがいて鰹節と醤油で食べると美味しいですよ、とポルトガル人に教えてもダメか。最近の日本人がなっとらんのは納豆を食べないせいか・・・・すいません
キターッ!!ポルトガルのソウルフードですねぃ・・・コレが消化出切るなんて凄い。
オクラはタマネギやベーコン、チョリソと炒めてトマト味にすると冷えても美味いです。
カレー味にしても良いし・・・但し煮すぎると、鼻水みたいに粘るので、チョットネ。
オクラはタマネギやベーコン、チョリソと炒めてトマト味にすると冷えても美味いです。
カレー味にしても良いし・・・但し煮すぎると、鼻水みたいに粘るので、チョットネ。
はじめまして。愛知県国際交流協会の水谷と申します。
当協会では2005年の愛知万博に公式出典した国をテーマにした教材を作成しております。
これまでに作成いたしました教材は当協会のホームページよりご覧になれます。
トップページより「協会作成物」→「国際理解教育教材 わたしたちの地球と未来」へぜひアクセスしてみてください。
愛知県国際交流協会URL
http://www2.aia.pref.aichi.jp/topj/indexj.html
つきましては今年度アンゴラ教材を作成するに当たり、
ぜひ「りすぼんうまいもの日記」よりアンゴラ料理のお写真を使わせていただけないでしょうか。
koryu@aia.pref.aichi.jpまでご連絡をお待ちしております。
なお、原稿の締め切りが月曜日と迫っておりますので、
お早めにご連絡くださいますようお願い申し上げます。
愛知県国際交流協会 水谷みゆき
当協会では2005年の愛知万博に公式出典した国をテーマにした教材を作成しております。
これまでに作成いたしました教材は当協会のホームページよりご覧になれます。
トップページより「協会作成物」→「国際理解教育教材 わたしたちの地球と未来」へぜひアクセスしてみてください。
愛知県国際交流協会URL
http://www2.aia.pref.aichi.jp/topj/indexj.html
つきましては今年度アンゴラ教材を作成するに当たり、
ぜひ「りすぼんうまいもの日記」よりアンゴラ料理のお写真を使わせていただけないでしょうか。
koryu@aia.pref.aichi.jpまでご連絡をお待ちしております。
なお、原稿の締め切りが月曜日と迫っておりますので、
お早めにご連絡くださいますようお願い申し上げます。
愛知県国際交流協会 水谷みゆき
by caldoverde
| 2008-02-17 04:51
| インターナショナル料理
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