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ポルトガルの食べ物、生活、観光情報


by caldoverde
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尼僧の腹、修道士の頭

 近所のカフェに行ったところ、見慣れないお菓子があった。「尼僧の腹」という意味ありげな名前の半月型のパイ状のお菓子で、表面は蜂蜜かジャムで照りがつけてあり、卵とアーモンドと砂糖で作られた餡状のものが入っている。相当甘いことを覚悟し、苦いビッカ(エスプレッソコーヒー)を一緒に頼んだ。親切なカフェのおじさんは食べやすいように半分に切ってくれた。食べてみるとパイ皮はさくさくではなくぽくぽくしている。皮も餡も予想したほど甘くなく、乾燥した黄身餡饅頭といった味わいである。緑茶に合いそうだ。
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 それにしてもなぜ尼僧の腹なのだろうか。その謎は本屋で見つけた「修道院のお菓子」という本でいくらか解明された。昔、修道院では1日当たり6000カロリーにも達する食事が摂られていたそうだ。卵は1日3個、修道院長は4個まで食べることが許された。1日に飲むワインは1人1,5リットル。道理で昔の漫画で描かれる修道士たちは丸々と太っていたわけである。尼さんのお腹は妊婦のごとく大きく膨らんでいたのだろう(実際に王様の子供を宿した尼僧もいた。) 修道院起源のお菓子は大量の卵黄と砂糖が基本である。それにアーモンドの粉や、ジラというかぼちゃのジャムが加わる。香り付けは圧倒的にシナモンが多い。禁欲的なイメージとはうらはらに修道士たちはどんどん太り、虫歯になり、結果、短命であった。私が食べた「尼僧の腹」はダイエット中の尼さんだったようだ。

 尼僧のお腹があるなら、頭のてっぺんを河童のように丸く剃った修道士の頭を連想させるお菓子もある。リスボンのカテドラルのすぐそばの聖アントニオの生家があったとされる場所に同聖人を祀った教会がある。リスボン生まれでイタリアのパドヴァで活躍したこの聖人はポルトガルの人々にとても人気がある。アルファマ地区の古い民家には幼子イエスを抱いた聖アントニオのアズレージョが貼り付けられている。お土産屋には漫画化されたユーモラスな姿の、葬儀屋には美化された見目麗しい聖アントニオをかたどった人形が見られる。
 聖アントニオは紛失物と結婚という切実な願いを聞き届ける聖人なので、教会内には常に熱心に祈りをささげる信者の姿が見られる。異教徒に効果があるかどうかは疑わしいので、せめて聖人にちなんだお菓子を食べてご利益の一分も与ることにしよう。
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 カテドラルや聖アントニオ教会から少し下ったところにカフェがある。そこには聖アントニオのお菓子なるものが売られている。干しブドウの入ったほんのり甘いブリオッシュ生地の丸いパンのてっぺんには修道士の刈り込んだ髪の毛のようなリング状の飾りがあって、その中はジャムで照りがつけられ、周辺にアーモンドのスライスを散らしている。
右が聖アントニオ、左が神様
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 修道女、聖人とくれば、つぎは神様。ポルトガルのどのカフェにもあるパォン・デ・デウス(神様のパン)は丸いパンの上にココナッツをのせて焼いたもので、見た目は日本のメロンパンに似ている。おやつ系菓子パンかと思っていたら、ポルトガル人はこのパンにハムやスライスチーズを挟んで軽い食事にする。名前の由来は知らない。

 このカフェには、今の子供や若い人たちの好みには合わないような、修道院のお菓子の流れを汲んだまっ黄色いデザートも何種類か置いている。従業員はこの道何十年という雰囲気のおじさんたちで、日本ならお寺や神社のそばにある昔ながらの饅頭や団子を売っている頑固職人の店といったところ。雰囲気はゆるいが。
これ一個で卵黄3個は使っていそうなプリン
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材料は卵黄とシロップそして多分オレンジ

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Commented by ちゅんち at 2008-07-07 16:29
次々の更新、うれしいです。しかし、数年前でもポルトガル人は一日4000キロカロリー摂取してるって言われてましたが、昔からの伝統なんですねぇ。タマゴもワタシは一日平均一個にしてると言ったら、それでも食べ過ぎだって言われるんだけど、こちらのヒトはお菓子その他で直接調理して無くても間接的に摂取しすぎだと思います。
しかし、ロシアではタマゴの黄身も白っぽいのだそうでそれを考えるとこの国のタマゴはブランドタマゴでなくても黄身がぷっくりと盛り上がって食欲をそそるものがあり、幸せを感じますが。
Commented by caldoverde at 2008-07-08 09:07
卵黄って加熱するとぽろぽろに固まってしまうのに、卵黄のネットリ感、半透明間をいかに残すかに昔のポルトガル人は苦労したんでしょうね。レシピには卵黄20個に砂糖500gなどと書いてあって、読んだだけで血糖値、コレステロール値が上がりそうです。
Commented by Moreia at 2008-07-11 19:59
「尼僧の腹」って隠微な響きがあると思ったのは私だけでしょうか?
ヴィラ・ヴィソーザのポウサーダのスイートルームは、やんごとなき家柄の尼僧が、秘密裏に出産した部屋だと聞きました。
「天使のほっぺた(つうか二重あご)」がわりと好きです。
Commented by caldoverde at 2008-07-13 00:28
「ドン・ロドリゴ」というお菓子は、ひょっとして悪名高いローマ法王アレクサンドル6世となったロドリゴ・ボルジアから来たのでしょうか。白い粉(砂糖)がたっぷり使われて・・・
Commented by Moreia at 2008-07-13 19:46
ポル語のサイトにはお菓子のつくりかたしか載っていませんね。
そう言われると、ロドリゴ・ボルジアが法王になるために配りまくったお金の包みのようにも見えてきますな・・
by caldoverde | 2008-07-03 18:06 | お菓子・カフェ | Comments(5)