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ポルトガルの食べ物、生活、観光情報


by caldoverde
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豚の胃

豚の胃_a0103335_18402034.jpg
 アパートの下にあるスーパーは一日千秋のごとく品揃えが変わらないが、さすがにデパートのエル・コルテ・イングレスの地下には何がしか新しい発見がある。この日も試食のおばさんに捕まってつい買ってしまったのはブッショ・レシェアード(豚の胃の詰め物)である。ホットプレートに3種類の腸詰の小片がいい匂いを発しながら焼かれ、ラッキーなことにそばには誰もいない。1つは以前書いたマラーニョスというヤギの胃に米や肉を詰めたもの、2つ目は普通のチョリッソ、そして3つ目は見たことのない食べ物である。
 なんだろうとこの白っぽい練物の様なものに手を伸ばした途端、どこで見張っていたのかエプロンを付けたおばさんが現れ、これはブッショといってベイラ地方で作られていて、豚の胃で包むのよ、とっても美味しいのよ、と説明しながら私の代わりに爪楊枝に刺してくれた。食べてみると、何だか判らないがねっとりしたものの中に、小さく切った肉が混じっている。珍しいのでひとつ買ってみることにした。彼女がどこからか持ってきたのは半分に切った野球ボールほどの大きさの豚の胃袋で、値段が10ユーロ近く(1600円位)である。「オブリガード」という声を背に受けその場を立ち去った私は、買い物かごに入れたそれをどこに戻そうか場所を探したが、レンジでチンすればすぐに食べられるという簡便さと、1度ぐらいは食べてみようかという好奇心が勝り、そのままレジを通った。
豚の胃_a0103335_18305199.jpg

 豚の胃は燻したような焦げ茶色で表面にパプリカの赤い粉がまぶされている。中身は包装の表示によるとパン、卵、豚肉、鶏肉、各種香料、香草で、保存料は使っていませんということだ。胃はイカの燻製のようにしっかりとした弾力があるが、中身の方は水っぽくて柔らかいので、なまくら包丁で形が崩れないように慎重に切った。断面は写真でご覧のように、全く魅力のないものである。レンジで暖めるだけでなくフライパンでちょっと焦げ目をつけたほうが見た目も匂いも良くなる。胃の丸みのある部分は切らずに中身をパカッとはずすとだいぶビジュアルが良くなるが、胃の方は東北地方でよく食されるホヤの殻のようだ。縫い閉じた糸が見えている。
豚の胃_a0103335_18333578.jpg

 パンに卵を混ぜてねとねとの粥状にこね、小さく切った肉や香草を混ぜた中身は、初めて食べるものだが、なぜか懐かしい味がする。しばらくしてやっと思い出した。おからの煮物だ。そう思ったら、かなり気持ちの悪い見た目や舌触りが気にならなくなった。
 スライスしてレンジで暖めると豚の胃は縮んで硬そうになったが、高いものなので捨てるのは癪だとばかりにノコギリナイフでゴシゴシ切って食べてみた。想像通りイカの加工品のような歯ごたえ、燻したモツのような味で上品とは言えないが珍味かも。屋台で焼酎と一緒に食べるのが似合いそうな。

 材料は高級なものではないのに、なぜこんなに高いのだろう。インターネットで作り方を調べたら非常に手間のかかるものであることが判明。まず豚の胃をきれいにするのに丸1日かかる。細かく切った肉も何種類かの香料で味をつけ1日置く。パンは、日本のパン粉のような便利なものはないので手で細かくちぎる。肉とパンを卵と一緒に混ぜて、洗った豚の胃に詰め、縫い閉じる。このとき胃はパンパンに膨らませず、少し余裕を持たせる。詰め物をした胃を熱湯でゆでるが、膨らんだときは破裂しないように針で穴を開けて空気を抜く。一度お湯からあげ、パプリカの粉を満遍なくまぶす。そして再び2時間から2時間半ゆでる。その間時々針でつついて空気を抜く。これで終わりではない。茹で上がった豚の胃にラードを塗ってオーブンに入れて焼き色をつけてからようやく食卓に上るのだ。ベイラ・バイシャ地方ではどんな機会にこの豚の胃を食べるのだろう。お祭りやお祝いの時だろうか。都会に住む私はそんなプロセスはすっ飛ばしレンジで1分暖めるだけ。有難いことだ。
Commented by jojo at 2008-09-10 21:34
これ、おいしいよねー。でも腹にもたれるしいっぱい食べれないね。
また食べたくなったら、今度はカンポリーデにおいでよ。
もっとずっと安いよ。
てか同じくらいの値段で、量が多い(困る?)。
ちなみに、地元のおばさんによると周りの腸の部分は
普通食べないそうです。
臭いしあまり好きじゃないのを、やっぱりもったいないと思って
無理やり食べてたけど、それ聞いてなんとなく心置きなく残せるように
なった(笑
Commented by caldoverde at 2008-09-11 14:35
モツの部分は、細く切って串に刺して炭火で焼いたら旨いんじゃないかと思いました。でもワインより焼酎が合いそうな気がします。
Commented by ちゅんち at 2008-09-11 18:09
jojoさん、今度は、是非ともお邪魔したいです。
皮の部分は、あごの強い私向きかも。

ところで、パン粉。前に同僚にも頼まれたし、ヤマザキさんも訴えているけれど、食パンを冷凍して、大根おろしでおろして代用してます。荒いのが好きなら手で握りつぶしても。白いのがよければミミは取っておくとか。

チーズのおろし金だとサラサラになり過ぎそうですが。
Commented by Moreia at 2008-09-12 06:59
以前膀胱だか腸だかの詰め物したのを食べた記憶があるけど、やっぱ臭かったよ。米粒も入っていたと思います。
うちの近所では「Tubelos」という豚の(山羊かも)のタ○タ○を食べさせるタスカがありますが、まだ試していません、caldoさん、ブログのネタのために行ってみませんか?もちろん私はカメラ担当します(笑

詰め物はきっと、農家のオッサンたちの晩酌のツマミなんじゃないでしょうか?ブッショなら野菜と付け合せておかずにもなるし。クリスマス前に屠ったブタ肉を、こうやって無駄なく一年かけて食べつくすんでしょうね。
Commented by おっちゃん at 2008-09-12 09:18
そんなにパン粉が珍しいのなら、どこか製粉会社の人、ヨーロッパで売り出したら、儲かるんじゃないですか?でもそちらでは自分で作るのが当たり前と思ってるんでしょうから買わないかな?ソーセージの皮も剥くか、どうするか迷いますよね。
Commented by caldoverde at 2008-09-12 15:14
なんだか「りすぼんげてもの日記」の様相を呈してきたような・・・さすがにTubelosを食べる勇気は今のところありません。ってゆうかタスカにいるおっさんからどんな視線を浴びるか想像すると恥ずかしいです。
Commented by ちゅんち at 2008-09-13 05:30
ワタシは、おっさんの視線は、気にならないのですが、食べたら鼻血が出そうで...
さすがに、この年で、それは恥ずかしいと思います。
Commented by jojo at 2008-09-15 20:40
この間アレンテージョ行ったとき、たまさんあったけど
わざわざお金払って、おぇっときたら嫌なんでやめました。
食べてみたいけど、自分で頼むのは嫌だ。
誰かに頼まさせて、ちょっとつまんでみたいです。
Commented by caldoverde at 2008-09-16 07:57
5人以上で食べに行ったとき、じゃんけんで負けた人が頼むというのは同でしょう。他の人たちは確実に美味しいと分かっているものを頼んで。
Commented by Moreia at 2008-09-16 22:48
今日そのつもりでお店の下見にいってきたら、閉まっていました。やっぱり「ゲテモノ」は受けなくなっているのかなぁ、残念です・・・いっそのことjojoさんの行ったアレンテージョのレストランへ行ってはどうでしょう、じゃんけんに勝ったひとは「黒豚の秘密」を食べられるし。
ちなみに私はTUBELOSの刺身を日本で食べたことがありますが、くにくにした食感は覚えていますが、お味の方は覚えていません・・・
Commented by おっちゃん at 2008-09-17 22:23
それってポルトガルでもゲテモノな感じの食べ物なのですか?ゲテモノを食べる東洋人のグループ、ベトナム人か、中国人か?地元の人の目にどう映るのでしょう?
Commented by caldoverde at 2008-09-18 04:28
ちょっと前までは生魚を食べる日本人はゲテモノ食い扱いされていましたが・・・スペインでは闘牛場でマタドールにとどめをさされた勇猛な牛の〇〇を食べさせるレストランがあると本で読みました。
by caldoverde | 2008-09-10 18:54 | 肉料理 | Comments(12)