ポルトガルの食べ物、生活、観光情報


by caldoverde
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黒蜥蜴亭のルーマニア料理

 町内に突如不思議な店が出現した。入り口に大きな丸いサボテンが門番よろしく構えている。中を覗くと黒い壁にはバロック風のゴージャスな彫りの入った額縁入りの鏡が掛けられ、同じくバロック風の銀色に塗られたフレームに黒いビロードの布が貼ってある椅子が置かれている。奥はやはり黒と白と金茶を基調としたインテリアで、天井からシャンデリアが下がり、上等そうな白いクロスは優雅なドレープを作りテーブルからすべり落ちている。入り口のガラスに貼られたお品書きは、どこの料理なのか聞いたことのないものばかりである。値段は昼のメニューのせいか意外と高くはない。客は誰もいない。いくらドアが開けられて中が見えても、この雰囲気は気軽に入っていけるものではない。黒いドレスを着た美輪明宏が出てきそうだ。私はこの店をひそかに「レストラン黒蜥蜴」と名づけた。
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 大抵の店は一人で入れる私であるが、この店はどうも一人では入りづらい。階下のスーパーに行くときやごみ出しに着る普段着ではかなり違和感を生じるインテリアだ。距離的には家のそばのごみ集積所から数十メートルしか離れていないのに、外出用の服に着替え、宝石を着けなくてはならない。美容院に行き、普段はしない化粧も必要だ。ハイヒールを履くので黒塗りのハイヤーを呼ばないと。そんな面倒を避けるためには一緒に普段着で入れる連れが欲しい。ようやく乗ってくれる友達が現れ、私達は徒歩でこの店に赴いた。

 席に着くと黒地に白と金茶で印刷された紙が渡された。この店の場所や連絡先、メニューを紹介したパンフレットである。店名をCartaz e Iguaria(ポスターとご馳走)という。それによるとこの店の三本柱はアレンテージョ料理、新インターナショナル料理、ルーマニアの伝統料理である。このシックなインテリアに田舎料理の代表格のアレンテージョ料理は全くのミスマッチだが、夜の部で出されるフランス料理っぽいインターナショナル料理にイメージを合わせているのだろう。そうであれば、夜はやはり宝石とハイヒールが必要となるかも。

 しかし幸いなことに昼はアレンテージョ料理とともに、ポルトガルと同じかそれ以上に田舎と思われるルーマニアの料理がメインなので、そのような気遣いは不要であろう。ランチは珍しいルーマニア料理を味わうことにしよう。そしてルーマニア料理と江戸川乱歩風インテリアがマッチするのか判断するのだ。ルーマニアと言えばかのドラキュラ伯爵の伝説の地ではないか。するとこの黒い内装は吸血鬼ドラキュラをイメージしたものなのか?
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 まずパンとともにバターと何かペースト状のものが出された。このペーストは見た目も味も、もろみ味噌にそっくりだ。腸詰(多分ファリニェイラ)とチーズを混ぜたものだそうだ。とうもろこしのパンに付けるとパンのうす甘い味ともろみの塩辛さがとてもよく合う。バターもただのバターではなく、ケッパーを混ぜたものである。

 前菜はルーマニア産のヤギのチーズにフェンネルの葉を混ぜたものを詰めて焼いたスタッフドトマト。一皿に三つで結構なボリュームがある。

 メインはひとつがルーマニア風とんかつ。とんかつといっても衣は天ぷらに近い。これにマッシュルームの入った濃厚なソースがかかっている。付け合せはマッシュポテト。
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 もうひとつはルーマニア風ロールキャべツ。俵型ではなく、三角に巻いてある。また、生キャベツではなく、ドイツのザワークラウトのような酸っぱいキャベツで巻いてある。具は挽肉と米、付け合せは黄色いとうもろこしの粉を練ったポレンタ。
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 どちらの皿にも赤いパプリカの粉と香草で彩を添えている。味は懐かしの日本の洋食といった趣で、ポルトガル料理が日本人の口に合うのとはまた別の意味で、日本人の味覚に合った料理と言える。とんかつのマッシュルームソースは正に日本でよく使われるあのソースの味である。酸味のあるキャベツは柔らかくさっぱりして肉の脂っこさを感じさせない。付け合せのマッシュポテトやポレンタは、ポルトガル料理のフライドポテトや丸ごとゆでたじゃがいもよりも胃に優しくて、ご飯やおかゆに近いものがある。肉も魚も野菜もそのままの姿でどーんとやって来て、何にでもオリーブオイルを使うポルトガル料理のほうがワイルドだ。

 しかし、もしかするとこの店のアレンテージョ料理は普通のポルトガル食堂とは一線を画し、この内装に相応しい洗練された味と盛り付けなのかもしれない。こっちも気になるし、夜の新フランス風料理もどんなものか知りたいし…この変なお店がもっと繁盛し(この日の客は私たちともう一組)、私が盛装して誰かにエスコートされて再来できるような日が来るまで、存続することを願っている。
www.cartazdiguarias.com
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 食事が済んで地下にあるトイレに入ると、ここもまた凝っていて、黒い石の壁に金の唐草の額の鏡、大理石の洗面台、そしてトイレットペーパーは…真っ黒!用を済ませて洗面所から出れば、重たそうなビロードのカーテンの向こうにはルージュのような真っ赤な皮のソファーが!やはり美輪明宏か黒いマントのドラキュラが出てきそうな舞台装置であった。
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Commented by jojo at 2008-11-06 22:40 x
次回は夜是非行ってみたいね。来年か?!
そして今度はルーマニア料理以外のメニューを試してみたい・・
でもインテリアとってもきれいだし、シェフも話しかけてきたりして
オープンしたばかりのやる気満々さがあって好感度大でした。
(さらにここのトイレは大腸ガンの不安もわすれさせてくれます。笑)
ただし量が多いので注文のし過ぎにご注意~
Commented by ちゅんち at 2008-11-06 23:54 x
なにー?!

ちゅんちも是非とも行きたいぞ。
Commented by Moreia at 2008-11-07 12:10 x
わぁ、ついにルーマニア料理の店ができたか!一番好きなのはロールキャベツ、サルマーレ。ポレンタはママリガっていって、ルーマニア人はこれをどんぶり一杯食べちゃう。凄いボリュームだよね。
ルーマニアワインもあった?
アレンテジャーノがルーマニア人の女性と結婚して始めた店だったりして・・・?
Commented by caldoverde at 2008-11-07 18:30
オーナーがルーマニア人だそうです。ルーマニアワインで作ったのかどうかは不明ですが白サングリアを飲みました。金魚鉢みたいな容器で出され2人では飲みきれませんでした。
by caldoverde | 2008-11-06 19:35 | インターナショナル料理 | Comments(4)