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ポルトガルの食べ物、生活、観光情報


by caldoverde
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トゲトゲです


11月16日はポルトガルに2人しかいないノーベル賞受賞者の一人、作家のジョゼ・サラマーゴの誕生日という事で「くちばしの家」に行ってみた。テージョ河に面したこの建物は16世紀の貴族の館で、ファサードを覆うダイヤモンドのような尖った石が鳥のくちばしを連想させることからこの名前で呼ばれている。現在は更孫財団と建物の床下にあるローマ遺跡を保存する考古学館となっている。風変わりな監獄のような外観とは異なり、中は超モダンで、半分ほど吹き抜けになっていて床面積が意外なほど少なく、ふんだんに大理石を使った贅沢な作りである。ポルトガルの建築家は空間のための空間が好きだ。11月は更孫先生の誕生日ともう一人の20世紀の大詩人のペッソーアの命日もあるので、関連イベントが行われ、記念日の入場料は無料ということだ。


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サラマーゴの資料館、図書館、書店がある

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ローマ時代はここでナンプラーを作っていた



サラマーゴの本は何冊か入手したが、あのだらだらした文体が腹立たしく、数行読んで人にあげたりしていた。一体どこで読点が打たれてこの文章が終わるのか、時には改行もなく数ページにも及ぶ。よく読むと途中に括弧なしで違う登場人物の会話が混じって何が何なのかわからなくなる。原書を国費留学生のブラジル人に進呈したら、その人でさえ難しいと言っていたので、私には当然だ。日本語に翻訳された「修道院回想録」は二度途中で投げ出し、三度目のチャレンジで完読した。しかし最後のページでものすごいカタルシスを得た。小説を読んでこれほど感動したことはなかった。


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世界中で出版された「修道院回想録」


そんなに感動したのに、増え続けるモノを減らすため、これもバザーに出してしまった。(元々只で手に入れた)数年後もう一度読みたくなり、日本に帰った時にアマゾンで中古本を購入した。何しろ新刊だと4000円以上もするし、20年前に出版されたきり再版されていない。改めて読むと、以前は退屈に感じた固有名詞の羅列も具体的な形を取ってイメージできるようになっていた。ポルトガルに住んで20年も経つと、地名や聖人の名前が実在の場所や絵画彫刻としてある程度思い浮かべられる。18世紀の絶対王政の元、壮麗な建造物や豪華極まりない典礼の陰で、惨めに使い捨てにされる民衆の姿が強烈な対比をなす。虚構と史実が絢爛たる言葉で綴られた、まさにバロック的な作品だ。主人公は七太陽と七月の異名を持つ夫婦、バルタザールとブリムンダ。陰と陽、外界と内面、肉体と精神のような相反し補完し合う2つの概念を象徴する。


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登場人物の一人、ジョアン五世のマイカー


アマゾンで「あらゆる名前」という本も買った。旧態依然としたお役所のしがない一職員を主人公にした小説だ。社会の中で無名化、記号化された人間がその尊厳を取り戻す過程を描いた作品、という解説だが、私にとっては結構面白いユーモア小説で、何回も声をたてて笑った。文体は相変わらず回りくどく理屈っぽい、括弧なしで独白や会話が紛れ込む例のスタイルなのだが、どこか哲学者の土屋賢二氏や漫画家の東海林さだお氏のエッセイに共通するものがある。堅苦しい、真面目くさった表現でありふれたものを描写すると、その仰々しさがすごく可笑しく感じられる。また主人公の小市民っぷり、小心者っぷりは、自分自身はもちろん、知り合いや過去に出会った実在の人物の中にも見出すことができるほどだ。職権を濫用した主人公が自分のしでかした事とその影響を想像しては悩みキョドる姿には、昔職場にいた某課長を思い出して笑った。


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「修道院回想録」は誤植や表記の間違いがあるので改訂が待たれる


「複製された男」や「白い闇」はアメリカで映画化され、なかなか面白いスリラー映画となっている。できれば「修道院回想録」を18世紀のポルトガルを再現したセットで映像化して欲しいものだ。バルタザールはすぐに思い浮かばないが、ブリムンダはナタリー・ポートマンが良いかな。あ、バルタザールはハビエル・バルデムで、ブリムンダはペネロペ・クルスで決まり。


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アズレージョに描かれたバルタザールとブリムンダ



by caldoverde | 2018-11-19 22:37 | カルチャー | Comments(0)

南蛮鴨

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吹く風が冷たくなり、熱々のうどんや鍋が恋しくなる今日この頃、いかがお過ごしでしょうか。


エネルギーを消耗する仕事の後、家には最近買った無印良品のレトルトカレーがあったにも関わらず、ご飯が炊けるのを待ちきれないと、近所のレストラン「カーザ・ドス・パッサリーニョス(小鳥の家)」で倒れ込むがごとく昼食を取った。いつもピーク時は満席の事が多く、時には入り口で順番待ちをしている客も見られるが、一人だと案外空いている席に滑り込む事ができる。


その日のおすすめが店頭のボードやメニューの先頭に手書きで書かれ、早々売り切れるものもある。時々登場するものもあれば、本当にその日にしか無い幻のメニューもある。私が選んだのは、その日のおすすめの一つで、ここで食べるのは2度目の「鴨のオーブン焼き」であった。


ポルトガルの鴨料理というと代表的なものはアロース・デ・パト(鴨飯)であろうす。これは家庭で作ろうとすると結構手間のかかるものだ。まず鴨肉を茹でて、細く裂かなければならない。スーパーには既に裂いてある鴨飯用の鴨肉が売っており、これを使っている飲食店もあろう。しかし鴨の茹で汁にこそ鴨の旨味が抽出され、これでご飯を炊くからこそ美味いのだ。出来合いの細切鴨肉を使ったのでは、出汁ガラで調理するのと同じである。従ってちゃんと手順を踏まずに調理済みの鴨肉を使った鴨飯はあんまり美味しくない。また平皿にしゃもじでよそった様なものも反則だ。本物の鴨飯は、炊いたご飯を陶器の皿に盛って卵の黄身で色を付け、チョリソやベーコンを上に散らしてオーブンで焼かなくてはいけない。


正しいヴィゼウの鴨ご飯



そんな訳で、美味い鴨飯は旧式のレシピを守っている田舎で食べた方が美味しい。一応都会であるリスボンではじっくりと時間をかけて調理した鴨飯をゆっくり味わう暇がない人も多いので、もっとスピーディにできる鴨料理が主流?とならざるを得ない。多分。


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「小鳥の家」の鴨のオーブン焼きは、それ程待たずに出てきて、しかも鴨の肉にご飯が付いているので、見た目は違えど腹の中では鴨飯になり、おまけに皮付きのジャガイモの素揚げも添えてあり、なんか得した気分になった。


鴨肉は醤油を使わない蒲焼き風とでも言おうか、甘辛系の味付けで脂ののった鴨によく合う。ご飯はレーズンやナッツを入れてスパイスを効かせた、辛くないアジアンテイストの香ばしいライス。ひょっとするとマカオやアジアの料理から影響を受けたレシピかも。大航海時代に日本にやって来たポルトガル人達は南蛮人と呼ばれたが、南蛮という言葉には広くアジアや異国から来たというニュアンスも含まれる。リスボンで食べた鴨のオーブン焼きにはそんな香りが感じられた。鴨南蛮ならぬ、南蛮鴨である。




by caldoverde | 2018-11-11 05:20 | 肉料理 | Comments(3)