ポルトガル最南部のアルガルヴェは、温暖な気候と美しいビーチに恵まれ、ホテルやツーリストアパートメントが林立する国際色豊かなリゾート地である。仕事でラゴスという町に宿泊したが、歩いているのはほとんど欧米の観光客で、店ではポルトガル語が通じず、ここは一体どこなのだ?と戸惑った。1泊20€程度で泊まれるドミトリーや、深夜まで遊べるクラブやバーも沢山あり、リスボンからの格安バス等によるアクセスが容易なせいか若者も非常に多い。歳をとると、こんな人だらけの処の何がいいのかねと思うが。ラゴスはポルトガルの歴史では重要な町で、城や教会もあるのだが、訪れるのは中高年ばかりなのは日本も同様の傾向であろう。そんなリゾート地ラゴスの代表的なエクスカーションは、海から近隣のビーチや洞窟を眺めるボートツアーである。
アルガルヴェの海岸には、波の浸食によって出来た小島や洞窟が多い。その中で最も素晴らしいのはベナジル洞窟である。マリーナから観光船が出航し、沖に出てぐんぐん速度を上げると、沿岸には長大な白い砂浜、奇岩の並ぶ湾、垂直に屹立した断崖が交互に現れる。様々な色が重なった崖の途中や波打ち際には無数の穴が空いている。やがて船は平べったい岩のアーチをくぐり抜けると、そこには天然のドームの中央にぽっかりと空いた穴から降り注ぐ光を反射した、エメラルド色の水をたたえたプールが広がる。歓声が上がり、携帯電話を握った手が伸びる。洞窟の奥の小さな砂浜に大胆なビキニの女性やカヌーを漕いできた観光客が降り立ち、インスタグラム用の写真を撮る。こんなに映える場所もなかなかないだろう。
幻想的で美しい場所ではあるが、私にはどうも頭上が気になって落ち着かない。ドームにはヒビがいっぱい入っていて、いつ岩が欠けて落ちて来ても不思議ではないように思える。それどころか洞窟全体が崩壊する危険はないのか不安になる。穴だらけの断崖ギリギリに建てられたホテルや別荘は、もし地震や台風が来たら崖が崩れて海の中に落ちてしまわないだろうか?何しろアルガルヴェは1755年のリスボン大震災で甚大な被害を被った地方である。そんな心配をするのは私だけだろうか…?自然が作り上げた芸術とも言える美しい海岸線をぶち壊しているのもこれらの建物である。ハザード的にも環境的にもラゴス周辺のビーチは乱開発されすぎだと私は思う。
素朴な、自然の姿を残した海を見たい時はアレンテージョのビーチに行こう。密かに自分のプライベートビーチにしているアルモグラーヴェの海岸は、今のところそれほど観光化が進んでおらず、初夏はまだ閑散としている。細長く突き出た岬やギザギザの黒い岩で区切られた大小の浜は、きめ細かなベージュの砂とともに、波に洗われた小石の感触が心地よい。砂丘には愛らしい花が咲き、ハーブやイチジクの木が芳香を放つ。アクセスのない無人の海岸に海鳥が休息する。褶曲した地層からは途轍もない年月と力を感じる。村外れの下水処理場からビーチに向かう葦や草木で覆われた小道には、様々な小鳥の歌が聞こえ、鳴き真似をすると可愛い声で応えてくれる。アルモグラーヴェの海は、五感を鋭敏にし好奇心を刺激する。
今回は友達を誘って3人で来たので、色んなものが食べられた。お昼は村の中心部にあるレストラン「ラヴラドール」で、亀の手とアサリのニンニクワイン蒸しと鯵の塩焼きを注文。リスボンやアルガルヴェで食べた亀の手は、高い割に可食部が少なく塩辛いのが多かったが、ここのは身が大きくて塩加減も程よく大変美味。鯵やアサリも新鮮で味が良い。以前一人で来た時は混んでいたせいもあってあまり良い印象を持たなかったが、名誉挽回した。夜は隣村のロンゲイラの「ジョズエ」でウツボのフライ、アサリのリゾット、茹で蟹という海鮮三昧の1日だった。この日だけで1ヶ月分歩き(普段はエレベーターやバスに乗って移動)、1ヶ月分の海鮮を食べた(魚介類は高いので滅多に食べない)。アレンテージョの海は気持ちも大きくさせるなあ。
















































