心臓の形をした可愛い「コーヴェ・コラソン(ハートキャベツ)」と言う品種は、柔らかくて甘味があるので細かく切ってスープに使われることが多い。
ミーニョ地方発祥でポルトガルを代表するスープとなっているカルド・ヴェルデは「コーヴェ・ガレガ(ガリシア・キャベツ)」と言われる菜っ葉が欠かせない。ベテラン主婦は濃い緑色の固い葉っぱをくるりと巻いて目にも留まらぬ速さでトトトトと千切りにし、中堅主婦はハンドルでぐるぐる回す道具で細く刻み、新米主婦は市場で既に刻まれビニール袋に入ったキャベツを買い、ズボラ主婦はスーパーでレンジでチンするだけのレトルトを買い、私はレストランでプロの作ったものを食べる。
ちりめんキャベツと生ソーセージ
葉が鮮やかな緑色で美しい縮緬模様の「コーヴェ・ロンバルド(サボイ・キャベツ、ちりめんキャベツ)」は煮崩れないので、ソーセージを巻いてポルトガル風ロールキャベツにする。この料理で使うソーセージは、香辛料をたっぷり使って固く干しあげたチョリッソではなく、生の挽肉を羊腸に詰めたフレッシュ・ソーセージ。挽肉を使うより簡単で美味しい。
ポルトガルの土産物屋でよく見るキャベツや果物の形をした食器を作る陶器の会社は、19世紀末から20世紀初頭にかけて活躍したボルダロ・ピニェイロという陶芸家件漫画家が興した。アール・ヌーヴォーの影響を受け自然からのモチーフをふんだんに使った、リアリズムと装飾性の融合したユニークな陶器やアズレージョなどをたくさん生産してきた。比較的手ごろな値段のテーブルウェアや、ポルトガルの庶民を現したユーモラスな人形や、動物や植物をリアルにかたどった置物などを作る本社は、古い温泉病院のあるカルダス・ダ・ライニャ(王妃の温泉)という町にある。この町の名物の焼き物としては、ボルダロ・ピニェイロの製品のほかに、私のような上品な女性が口に出すのも憚るような仕掛けのあるマグカップもまた有名である。日本にも温泉地にはとんでもないみやげ物があるが、ポルトガルも然り。
ところが昨今の世界を覆う不況の影響で、この歴史ある陶器メーカーが経営危機に瀕しているという。ウェッジウッドやローゼンタールなど世界的に有名な高級ブランドだけでなく、ポルトガルにもその余波が押し寄せてきたのである。この愛すべき陶器が生産されなくなるのは残念だ。何とか持ち直して欲しい。
キモ可愛いボルダロ・ピニェイロの陶器