ポルトガルの食べ物、生活、観光情報


by caldoverde
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ラボ・デ・ペイシェ村の貸別荘「キンタ・ダス・タンジェリーナス(蜜柑荘)」のオーナーのクラウディアさんは若い小学校教員で、ボーイフレンドのヴァスコさんと共に家の管理や客の送迎を行っている。敷地はクラウディアさんの祖父が持っていた小さな果樹園で、その名の通り庭には柑橘系の樹木が何本か植えてあり、迎えに来てくれたヴァスコさんは何の樹か一つ一つ教えてくれた。やけに歴史や動植物に詳しいと思ったらガイドだそうで、翌日の半日観光をお願いした。


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レストランの壁画。女性はアソーレス出身の文学者ナタリア・コレイア。


ホテルから蜜柑荘までの移動は、ヴァスコさんが12時にロビーに迎えに来て村のレストランで私を下ろし、食事が終わる頃に再びやって来て蜜柑荘まで送ってくれた。「ボテキン・アソレアーノ」は魚がメインの、おそらく村の誰もが推奨する店だ。まず島に来たら自分のお約束のカサガイを注文する。残念ながらアソーレス産ではなく、マデイラ産だが若干安いという事だ。アソーレスのカサガイは採る時期が決まっていて、冬は流通しないそうだ。魚はペイシャン(大魚)という名前の小さめの鯛のような魚であっさりした淡白な味だ。デザートはクルミのタルト。私はクルミが大好きなのだが、ポルトガルのクルミ系菓子には失望することが多かった。しかしこの店のはザクザクとクルミが使われていて食感と香ばしさが素晴らしい。カサガイや魚よりもクルミタルトの方が印象に残った。


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翌日の半日観光は通常の観光コースではなく、リクエストで2箇所を重点的に組んでもらった。一つはカペラスという村にある工房博物館。昔の店や工房を再現したテーマパーク又は田舎のキッザニアの様な施設で、消滅しつつある個人規模の伝統的な商工業を子孫に伝える趣旨で創られた。一坪程度の店舗がぎっしり並ぶ様子は昭和の商店街のミニチュアのようだ。鍛冶屋、印刷屋、タバコ屋、薬局、飲み屋、布地屋、床屋、玩具屋などありとあらゆる職種があり、昔の道具やレトロな商品が並べられている。展示物は島民からの寄贈によるものがほとんどだ。


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工房博物館を後にし、島の西側の風光明媚な海岸線に沿ってドライブし、もう一つの目的地のフェラリア温泉に向かった。ほぼサン・ミゲル島の最西端にあるこの温泉は、黒い火山岩に囲まれた天然プールの中にお湯が湧き出ており、波が静かであれば、海と一体となったワイルドな露天風呂が楽しめるが、この日は風が強く波が荒く、天然プールの入浴は叶わなかった。しかし別に塀で囲まれた浴槽があるので、デッキで日光浴をしたり山を見ながら入浴できる。客はスペイン人の女性5人と私だけで、暖かいお湯の中でのんびり泳いだり浮かんだりできた。カルデイラ・ヴェーリャもフェラリアも人里離れた場所にあり、シーズンオフならばまさに秘湯であるが、個人で行くにはタクシーかツアーでないと難しい。アソーレス諸島は掘れば必ず温泉が出てくるはずなのだが数ヶ所しかない。ボーリングに金がかかるからと言うが、そうだろうか。もったいない事だ。


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ツアーはもう一つの島民お勧めのレストラン「オ・ペスカドール(漁師)」で終了した。漁港と仲卸市場のすぐそばにあり、魚の鮮度は疑いようがない。注文したのはボカ・ネグラ(黒い口)、日本の高級魚ノドグロの仲間と思われる。脂がたっぷりのって非常に美味。アソーレスの他の場所でもボカ・ネグラは食べたが、ここのが一番美味しかった。デザートはサン・ミゲル島特産のパイナップルのケーキ。ラボ・デ・ペイシェ村で食べる魚は、値段がリスボン並みかやや高めである。貧しい村なのにと疑問に思うが、天候や季節に左右される漁や魚の品質を考えれば妥当な、むしろ安い値段かもしれない。


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by caldoverde | 2018-12-24 00:58 | ポルトガルの旅 | Comments(0)
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ラボ・デ・ペイシェとは魚の尻尾という意味で、名前の由来は色々あるが、漁港のある湾の形が魚のように見えるから、というのが有力な説の一つである。しょぼい名に相応しく、村はポルトガル国内のみならず、EUで最も貧しい地域という不名誉な称号を受けている。海沿いの漁師町は手造りっぽい小さな家が連なり、ロープにずらりと吊り下がった洗濯物やゴミの散乱する道路、所在無げな男たちがたむろするバールなど、リスボン周辺に(私の家の近所にも)見られる典型的な低所得者層の多い地区の風景だ。住民の多くが漁業に従事し、子供たちは親の仕事を継ぐ。この村はポルトガルでも平均年齢が最も若い自治体で子供が多く、14~15歳で出産する少女たちは社会問題にもなっている。家族の結びつきが強く、伝統を大事にし、必然的にいとこ同士など親類間の婚姻が多い。女性達の容貌やスタイルはリスボンのジプシーの女性達と似通っている。実際、漁師達のルーツはその昔の海賊やジプシーだったらしく、他の住民達との間には格差や差別があり、昔は教会でのミサでも漁師達の席はそうでない住民(特に女性)から離されていたそうだ。


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一方海岸から離れた地区は文字通り山の手の、主に農業を営んでいた家族が住んでいる所で、3日目と4日目に泊まった貸別荘は、この山の手地区にある。18世紀迄はこの辺りはオレンジ栽培が盛んで、ヨーロッパ、特にイギリスに向けて出荷され、オレンジルートと呼ばれるほど大いに栄えていた。ところが病気によりオレンジの木はほぼ全滅してしまい、代わりにサン・ミゲル島では新たな商品作物としてパイナップルが作られるようになった。この地区はかつてのオレンジ農家や果樹園の名残の高い塀や生垣で囲まれた住宅が多く、入り口には〇〇屋敷と書かれたアズレージョ(タイル)の表札が付けられている。


私が借りた家は蜜柑荘(キンタ・ダス・タンジェリーナス)といい、生垣に囲まれた小さな果樹園の中に造られた築6年の一戸建てである。車がやっと通れる細い道の奥にあり、付近にはスーパーも飲食店も何もないので、外食するにも買い出しするにも漁師町の方に降りて行かなくてはならない。


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お一人様には広すぎる3LDK


漁師町と山の手の境目に警察署とロータリーがあり、そこから幹線道路が東西に伸びる。幹線道路を西に向かって数分歩くと、テラス席のあるカフェが現れる。ヨーロッパ最貧の村で生まれたチョコレート専門店「ショコラティーニョ O Chocolatinho」である。ベルギーで修行した若者が、アソーレス産の材料を使ったユニークなチョコを製造販売し、チョコの他にケーキやサンドイッチなどの軽食も出す。ちょっとコーヒーを飲むために立ち寄ったのだが、バナナとパッションフルーツのボンボンも食べてみた。その時は特にどうって事はない、普通のチョコレートに思えたが、地場産品なのでお土産用に9個入りの詰め合わせを一箱買った。それをトランクの中に水平にせずに立てて一晩置いたら、チョコの中の液体が流れ出てしまった様で、箱とトランクがベトベトする。しょうがないなあと自分で食べることにした。


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デザインも可愛い💕



そうしたら…美味い‼︎フルーツの味と香りが口いっぱいに広がりチョコレートと溶け合い、素晴らしい調和を醸し出す。アソーレス産のミルクがフルーツやカカオの刺激をまろやかに中和する。はっきり言ってヘーゼルナッツのプラリネばかり使ったゴディバよりも、ポルトのアルカディアよりもずっと美味しい!昨日はコーヒーの味や香りにかき消されてあまりチョコの印象が残らなかったらしい。ピンクに色付けされたホワイトチョコはてっきりイチゴかと思いきや、塩味の赤いジャム状のものが入っている。アソーレス料理に欠かせないピメントの塩漬けのペーストで、何とも不思議な美味しさである。9個入りの箱はすぐ空になった。


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アソーレスはこんなに色んなものが採れるのかと感心する種類の多さ

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青いのがアソーレスバナナ、奥はパッションフルーツ

バラで売っているボンボンは一個50~60セントから。子供達もコインを握りしめて買いに来る。品質は山の手のお金持ちを満足させ、値段は漁師の子のお小遣いでも買える。リベイラ・グランデに支店があり、リスボンではバイシャ地区のアソーレス物産専門店で若干売っている。もし近くにお店があったら、毎日通っていたに違いない。チョコラティーニョのチョコレートは、私的チョコランキング第一位に輝いた。


by caldoverde | 2018-12-14 03:32 | ポルトガルの旅 | Comments(0)

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ホテル・ぺドラス・ド・マール(海の石ホテル)は集落から離れた海岸に位置し、火山石と杉の木というアソーレス特有の建材をふんだんに使った建物で、3年前にオープンしたばかり。浴室がガラスで仕切ってあり、大きくとった窓の景色が入浴しながら楽しめる。ネットで見た写真はオーシャンビューだったので、それに惹かれて選んだのだが、安いだけあって反対側のマウンテンビューの部屋だった。海側に変更するには12€のエキストラ料金がかかる。到着日はあまり天気も良くなかったので部屋はそのままにしたが、翌日はやはり海が見える部屋に替えてもらった。


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ホテルの後ろは牧場、前は海岸


二日目は温泉入浴を含むフォーゴ湖半日ツアーを申し込んだ。ガイド兼ドライバーのペドロさんがホテルに迎えに来てくれた。客は私一人で、料金は40€である。以前は普通のタクシーに適当に名所を回るよう依頼し、3~4時間で60€払っていた。現在はツアー会社が沢山あり、グーグルマップやトリップアドバイザーなどで簡単に見つけることができる。半日、一日のコースが色々あり、値段もそれほど高くないのでお勧めだ。ラボ・デ・ペイシェ村、リベイラ・グランデの旧市街とリキュール店、カルデイラ・ヴェーリャ温泉、フォーゴ湖を周る。


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リベイラ・グランデの旧市街は白壁に黒い石で縁取った美しい建物が多い。

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アソーレス産の果物やミルクを使った様々なリキュール。可愛い陶器の人形やミニチュアボトルもある。


主目的のカルデイラ・ヴェーリャ(古釜)温泉は初めてアソーレスに旅行した時に、帰り際にタクシーで立ち寄ってもらったが、その頃はまだ温泉としての設備(入場券を売る入り口やロッカー)が無かったように思う。現在は道がきれいに整備され、敷地内にはサン・ミゲル島の自然を紹介する小さな環境センターがあり、土産やコーヒーも売っている。鬱蒼とした巨大シダや杉の木に囲まれた温泉には3つほど露天風呂があり、若いカップルや熟年夫婦が38度の赤っぽい湯でまったり寛いでいる。風は唸り声を上げて杉の枝を揺すぶるが、温泉は谷底にあるので、寒くはない。シーズンオフなので入浴客は10人もいなかったが、夏は2時間待ちだそうだ。1時間半の滞在時間はあっという間に過ぎてしまった。


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よく見ると入浴客の手や頭が見えます


ツアーはラボ・デ・ペイシェ村にある農業協同組合のレストランで終了した。月曜日は魚をメインにする店は鮮魚の仕入れがないので休みの可能性が大で、肉がメインの農協レストランが良いでしょうとのペドロさんのアドバイスに従った。アソーレスは牛肉も有名で、リスボンのアソーレスレストランで食べたトカゲステーキは今まで食べたステーキの中で最も美味しいものだった。しかし実際にアソーレスで食べたステーキにはハズレも何度かあった。店は選ばないといけない。この農協レストランRestaurante da Associação Agrícola はサン・ミゲル島内のみならず、全国的にその名声を博している。ステーキは色々な種類のソースがあり、それぞれ大きさと部位が3種類づつある。私は最もシンプルかつアソーレスらしいレジオナル・ステーキ(地元のステーキ)の小を、テンダーロインのミディアムで注文した。地元ステーキとはピメントの塩漬けとニンニクがのっているもので、ソースもピメントのペーストと白ワインが使われる。肉の旨さもさることながら、ソースの浸みたフライドポテトが激ウマで、芋の種類が違うのか中がとろけるようにクリーミィで、完食してしまった。デザートはお茶のプリン。日本の抹茶プリンを彷彿とさせるこのデザート、リスボンではアソーレスレストランにもあるかどうか微妙なので、ヨーロッパ唯一の茶畑のあるサン・ミゲル島に来たらダイエットを中断しても是非味わいたい。


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by caldoverde | 2018-12-10 04:53 | ポルトガルの旅 | Comments(0)
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ラボ・デ・ペイシェ(魚の尻尾)警察署の看板


寒い日に大きな浴槽でじんわり湯に浸りたいという欲求は、私を旅へとかきたてる。気がつけばアソーレス行きのローコストの航空券とオフシーズンでかなり安くなったホテルを予約していた。エアーチケットはサン・ミゲル島往復50€弱と、電車でポルトに行くよりも安い。海の真ん前の5つ星ホテルは2泊で114€。海を見ながらプールで泳ぐ事もできる。もう一つの宿は庭付きの貸別荘丸々一戸で、2泊60€。場所はサン・ミゲル島の北側、島で2番目に大きな町リベイラ・グランデの隣にある、ラボ・デ・ペイシェ(魚の尻尾)という名の村だ。リベイラ・グランデの近くにカルデイラ・ヴェーリャ(古釜温泉)という天然温泉があるので、その辺りの宿を探していたら、ラボ・デ・ペイシェに見つかったという訳である。


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魚尻村のメインの教会にはXmasの飾りつけ


リスボンの濃霧のためにサン・ミゲル島に着いたのは予定よりも2時間遅れの昼2時過ぎで、雨も降っていたので、首都ポンタ・デルガーダの市内観光はパスし、タクシーでカルヴァン洞窟に向かい、そこで昼食をとった。今年の7月にテルセイラ島の1日ツアーで2つの洞窟に入り、火山の作る様々な造形に感銘を受けたので、サン・ミゲル島でもぜひ洞窟を見たいと思っていた。しかもすぐ隣には良さげなレストランもある。カルヴァン洞窟はポンタ・デルガーダの町外れにあり、午後に3回ガイドツアーが行われる。着いた時は2時半からの英語によるツアーが始まるところであった。ポルトガル人にもわからないサン・ミゲル弁よりはネイティブじゃない英語の方が聞きやすかったかもしれないが、まずは腹ごしらえをしてから1時間後のポルトガル語のツアーに参加することにした。


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本土のタコのオーブン焼きは足2~3本程度だが、この店のは小ぶりながら一匹まるごと、頭も付いている。柔らかくてとても美味しい。付け合わせはタコが抱きかかえた皮付きジャガイモと、青菜と豆とパンのそぼろ(ミガス)で、塩分控えめだがアソーレス料理にお約束の塩漬けのピメントがアクセントを効かせている。


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手前の白っぽいものはタコの頭

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ちゃんと脚が8本ある


カルヴァン洞窟は全長5kmに及ぶが、30分のガイドツアーで歩く距離は短いので体力が無くても大丈夫。溶岩流の造ったトンネルの地面はギザギザに尖った溶岩の塊や大小の火山礫が積み重なり、一方壁や天井はチョコレートが溶けたように滑らかで鈍く光る凹凸を成し、付着したバクテリアが様々な紋を作っている。触りたくなるが、残念ながらタッチ禁止である。


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触りたいけど我慢


サン・ミゲル島は比較的路線バスが多く、ちんたら走るバスに乗るのは私的アソーレスの旅の楽しみの一つなのだが、日曜日は本数は激減するので洞窟からホテルまではタクシーを使わざるを得ない。アソーレスのタクシーは未だにメーターがなく、走行距離に応じた料金が表になった紙を見て請求される。納得いかないが空港と街を結ぶバスもないので、空港からの移動はタクシーかレンタカーしかない。ポルトガルではだいぶUBER(白タク)が普及し、はっきり言ってタクシーより快適なのだが、タクシーの運転手たちが反UBERストを行った結果、むやみに増えないように法律ができた。アソーレスにはUBERはまだ上陸していないようだ。


by caldoverde | 2018-12-08 20:02 | ポルトガルの旅 | Comments(2)
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ファイアル島から見たピコ島の勇姿

遂にこの秋日本とポルトガルを結ぶチャーター機が飛ぶことになった。今まで何万人の日本人がポルトガルは遠いと嘆いていたことだろう。東京からリスボンに昼過ぎに到着、しかもアソーレス諸島も訪れるツアーができるとは‼︎ 

リスボンに2泊、アソーレスのファイアル島2泊、サンミゲル島2泊、ポルト2泊という、珍しい行程で、更にピコ島の日帰り観光も入るという、アソーレス大好き人間の私にとっては夢のような旅だ。今回はツアーガイドとして行くので責任重大である。


飛行機からファイアル島に近づくと、どうしても隣のピコ島に眼が釘付けになる。ポルトガルの最高峰でもあるピコ島は、雲海の中に尖った山頂を見せて旅人を歓迎する。特に日本人にとっては感動的な光景だ。ファイアル島のオルタ空港では若いベルギー人のガイドのマリーさんがお迎えに来ていた。彼女は半年祖国の旅行代理店のオフィスで働き、半年オルタでガイドをするという素敵な生活を送っている。オルタに住むようになってたった4年だそうだが、歴史や地理に精通しているばかりではなく、島民にもかなり顔がきくようである。私が個人でアソーレスに行くときは英語のガイドブックとタクシーの運転手を頼りにしていたが、次回からは島のガイドさんを依頼するのも視野に入れようと思う。


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世界中のヨットマンが集まるオルタ港

ファイアル島に着いたのは月曜日の午後で、定休日にもかかわらずフラメンゴ地区の植物園はほぼ地球の裏側からやって来た私たちのために開けてくれた。入ると懐かしい湿った土の匂いがする。リスボンでは嗅ぐことのない匂いだ。学芸員から聞くアソーレス諸島の固有種や人間が島に持ち込んだ植物の話は興味深く、花の沢山咲く時期にぜひまた訪れたいと思った。またここには最近発見された世界に2株しかない新種を含む素晴らしい蘭のコレクションがあり、蘭の愛好家には必見だ。

ファイアル島中央のカルデイラ(火山盆地)には固有植物80種のうち50種があり自然保護区になっている。許可を得て専門のガイド同伴でないと入れないので、機会があればぜひ行って見たい。


翌日はホエールウオッチングを兼ねたボートでピコ島に渡り、捕鯨博物館と世界遺産のワイナリーを見学というプログラムだ。船を操縦するのはファイアル島に知らない人はないという島の有名人、ノルベルト船長である。ヒッピーがそのまま年取ったような、海賊のような風貌の船長は、ファイアルを捕鯨の島からホエールウオッチングの島へと転換させた立役者だ。船長は他の船と連携しながら鯨のいる場所を探し当て、私達はマッコウクジラの潮吹きと水上に飛び出した尻尾を2回も見ることができた。マイルカやマダライルカがシンクロ水泳のように2頭一緒に海面に顔を出してはくるりと潜ったり、船と競争するかのように一緒に泳ぐのを見るのも愉快だ。


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クジラやイルカを撮るには良いカメラと腕が必要なので、停止中の船しか取れず

ポルトガルはかつてマッコウクジラを捕って鯨油や肥料を作っていた。日本の捕鯨と異なるのは食用目的でない事と、手漕ぎのボートから手で投げる槍で仕留めるという伝統的な手法で行われた事だ。今は捕鯨博物館となった鯨加工場の前に立つ鯨捕りの彫像には、地球上最大の動物に原始的な道具で立ち向かっていたアソーレスの男たちの勇気がしのばれる。


世界遺産になっているピコ島のワイナリーでは、数世紀に渡り火山岩を積み上げて作った石垣に囲まれたわずかな区画に一本一本ぶどうの木を植え、手で摘み取り運ぶという気の遠くなる作業に思いを馳せ、不毛の地と格闘してきた先人の汗と知恵が作り上げた景観に感動せずにはいられない。ピコ島醸造組合でそのエッセンスである高貴な香りのピコワインに舌鼓を打った。

機械化による効率主義や大量生産といった文脈から離れて細々と継承され、数世紀の間アソーレスの経済を支えてきたこの二つの産業は、反捕鯨の潮流やブドウの病気や自然災害などのカタストロフに打ちひしがれても再び立ち上がるアソーレス人の不屈の精神を反映している。


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アソーレスの人々がしばしば直面したカタストロフは、火山の噴火と地震である。ファイアル島のカペリーニョス火山は自然の威力をまざまざと見せつける、恐ろしくも美しいモニュメントだ。火山灰に埋もれた灯台の下は、アソーレス諸島で最も人気の高いミュージアムの火山センターとなり、1957~58年の大噴火の映像記録や、火山の成り立ち、種類などを解説している。火山の噴火によって島の茶畑とオレンジ畑が全滅し、多くの人々がアメリカ大陸に移民した。当時のケネディ大統領が特別にヴィザを発給し、カナダも米国に倣ったという事だ。


3日目はファイアル島からサンミゲル島にプロペラ機で移動。小さな飛行機は座席が自由席である。空港からサンミゲル島のガイドのマヌエルさんと共に、島に2つしかない海の見えない村の一つのフルナスに向かう。ここは去年の冬に湯治にきた所である。フルナス湖のほとりは硫黄の匂いと湯気のたちこめる温泉で、そこでは地熱によって有名な鍋物のコジード・デ・フルナスが作られる。今回は時間の関係で残念ながらツアーのメニューには入っていなかったが、サンミゲル島に来たらぜひ食べてみるべき料理だ。その代わりもう一つのフルナス村の温泉地のカルデイラス(お釜)で、名物のボーロ・レヴェドという薄甘いパンをお土産に買った。温泉で茹でたトウモロコシも有名だ。あちこちから湧き出る鉱泉水はそれぞれ微妙に味が違い、村人はペットボトルに好みの水を詰めて持ち帰る。


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茶摘みは機械で行うので茶畑は平ら

フルナス村では世界の名庭ベスト100にも選ばれたテーラ・ノストラ・ガーデンを散策し、その後にゴレアナ茶園の茶畑と製茶工場を見学した。紅茶とともに緑茶も生産しているが、よりシンプルな中国伝来の製法で作っており、日本茶と一味違う素朴な味わい。農薬は使用せず、除草係はヤギという、自然農法で栽培されている。


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奥が青湖、手前が緑湖

最後の日は、サンミゲル島の湖を巡る旅。神秘的な青と緑の湖のあるセッテ・シダーデス村、小高いすりばち状の噴火口にできたサンチャゴ湖、島で最も自然の姿を残すフォーゴ湖と、それぞれ異なる特徴を持つカルデラ湖をとても良いコンディションで見ることができた。


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島で最も澄んだ湖水のフォーゴ湖

この後一行はサンミゲル島からポルトに飛んで、ポルトからANAのチャーター機で日本に帰るのだが、10月にしては好天に恵まれ、アソーレスで雨具を使わずに済んだのはほとんど奇跡と言って良いと思う。ところが翌週はなんとアソーレスに台風がやって来てピコ島を荒らして行った。島への旅は、主催者も参加者もある程度気候条件による旅程の変更も念頭に入れておくべきだ。飛行機や船が欠航になるのはどの季節でも十分にあり得るのだから。










by caldoverde | 2017-10-21 18:54 | ポルトガルの旅 | Comments(2)
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フルナスの最終日。午前中はまたカルデイラスにホットスプリングズを見に行った。プチプチ細かい泡が出る小さな湯だまりもあれば、煮えたぎった熱湯が勢いよく噴き上がる泉もある。灰色の泥がボコっと膨らんでは破裂する穴もある。白い地面からほんわか湯気が立っている場所もある。見ていて飽きない。あちこちに水が出るパイプがあるので、試しに口に含むと、ペッ酸っぱい!鉄臭い!シュワっとする!こんな小さなエリアに様々な泉質と温度の水が湧くのにまた驚いた。

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コジードと共にフルナス名物の双璧をなす、ボーロ・レヴェド

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こんなに美味い袋菓子がアソーレスにあったとは…ビールクッキー


最後の日はお菓子の食べ比べになった。カルデイラスの土産物屋で買ったビールクッキーはサクサクと香ばしく今まで食べたポルトガルの袋菓子で1、2を争う美味しさ。特産の里芋のケーキは、ねっとり感と土臭さを抑えつつ甘さも控えめにして意外と上品だ。お土産にフルナス名物のボーロ・レヴェドを買うついでに、その店の「豆のケイジャーダ」と「フルナス谷のケイジャーダ」という2種類のケイジャーダ(フレッシュチーズを使ったお菓子)も試してみたら、どちらも甘さ控えめで美味しい! 乳製品の産地であるアソーレスのお菓子は程よくバターやチーズが使われていて、本国の何を原料としているのか判らないやたら甘い菓子よりも上質だ。サン・ミゲル島のヴィラ・フランカ・デ・カンポやグラシオーザ島のケイジャーダは有名だが、フルナスの小さなお菓子屋のケイジャーダもなかなかの実力。せっかく温泉やサイクリングでカロリーを消費したのに元の木阿弥になった。

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黒糖饅頭に通じる味の里芋ケーキ

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某有名観光地のケイジャーダよりも数倍美味しい

最後の夜はたっぷり厚みのあるアソーレス牛のステーキを食べたいと思い、微生物センターの男の子に聞いたところ、サン・ミゲル島で一番美味しいステーキは、リベイラ・グランデの畜産協同組合のレストランであるという。残念ながらリベイラ・グランデまで行ってステーキを食べる時間は無いので、微生物センターにチラシが置いてある関係も窺われるが、彼の推挙する村のレストランに行ってみた。フルナス湖にもこの店の名前の立札の刺さった砂山があったので、温泉コジードで有名なんだろうが、インターネットの評判はあまり芳しくない。

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やっと来たら、冷めている

店内はそこそこお客が入っており、評判ほど悪くはないのではないかと期待した。しかし注文したステーキがなかなか来ない。 やっと来たら冷めている。出来上がったのを放置していたのか焼く温度が足りなかったのか。焼き直しを頼んでしばらくして食べかけのステーキが来たが、結果は全く同じであった。それどころかフライドポテトは更に萎びていた。我慢して食べ始めたが、リスボンで食べるステーキは厚かろうが薄かろうが熱々が来るのになあと思うと、もう一度言わずにはいられなかった。素材は良いのに調理人のセンスが足りないのか、客席に持っていくタイミングが悪いのか…グラシオーザ島でステーキをミディアムで頼んだらウェルダンで焼かれたのを思い出す。それがこの店の流儀だとしたら、私はクレーマーだ。

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作り直し?のステーキも大差なし

入店から2時間後、2枚目のステーキが来た。今度のは幾分熱いので、せっかくの新しい肉を無駄にするのは申し訳なく完食した。しかしフライドポテトの方は前の皿のリサイクルらしく、更に硬く芋ケンピのようになっていた。リスボンのアソーレス料理屋のトカゲステーキ・ミゲル風はこれまで食べた最も美味いステーキだったのに、現地のステーキはなぜこんなのか理解に苦しむ。しかしポルトガル語で話しても英語で返事する給仕を見て、何となく解った。夏はイギリスやドイツの観光客が怒涛のごとく訪れ、最近はアメリカ人の観光客も増えている。彼らはゴムのような肉や芋ケンピのフライドポテトもうまいうまいと食べているに違いない。コジードは温泉が作ってくれるので、料理人の腕はあまり関係しない。そう言えば、観光案内所の隣にも関わらず、職員が紹介した何軒かのレストランの最後におまけのように付け加えたのがこの店であった。

勘定を見ると、15€だと思ったら11€しかついていない。私は15€の仔牛のビッフェ(ステーキ)を頼んだのに、店員はビトックを厨房にオーダーしたらしい。だから目玉焼きが付いて薄くて硬かったのか。それにしても1時間かかってぬるい料理が出されたのは解せない。今度来るときは、島民が口を揃えて勧めるリベイラ・グランデの畜産協同組合で最高のアソーレス牛のステーキを食べてやる。

肝心のフルナスの温泉効果であるが、4日通って足首の痛みはほとんど消えた。骨折が治った後も捻った靭帯がずっと鈍痛を持っていたのだが、2日目辺りから軽くなっているのを感じた。水着着用だからこそ混浴の可能な露天風呂で、様々な国の様々な年代の人々の色んな言葉のおしゃべりを聞くのも楽しいし、赤い小川の流れ、里芋畑に来る小鳥、浴槽の石に生える苔などを観察するのも飽きない。思いの外楽しめた湯治だった。

by caldoverde | 2017-01-01 06:49 | ポルトガルの旅 | Comments(4)
ずっとフルナスで温泉三昧しようと思ったが、ラゴアという町に「火山の家」という施設があるのを知り、また良いレストランがあるらしいので出かけることにした。フルナスから10時半に出発したポンタ・デルガーダ行きの路線バスは、くねくねした山道を走りいくつもの村や町を巡りながら正午ごろにラゴアに着いた。ラゴアには漁港があり、直ぐ隣に魚が美味しいと評判のレストランがある。ガラスケースにはいろんな魚が並び、お店の人が名前を教えてくれる。私は「インペラドール(皇帝)」というキンメダイに似た魚を注文した。この魚は高値で取引され漁が制限されていたらしい。ということは美味いのだろうが値段もそれなりに張るに違いない。先に来た客は前菜に私の大好きなカサガイを頼んでいたが、ぐっと我慢した。

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開いて炭で焼いた皇帝は、上品な白身の魚で、ノドグロのようにエラの内側が黒い。味もノドグロに似て程よく脂が乗り、とても美味である。デザートはマラクジャのムース。マラクジャ(パッションフルーツ)アソーレスの名産品の一つで、バールにはマラクジャのリキュールもよく置いてある。コーヒーを飲んでお勘定を見ると驚きの11€だった。ということは魚は7€ぐらいだった。カサガイも食べれば良かった。

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昼食後に「火山の家」を訪れた。海の真ん前にあり、隣はユースホステル。見学は午後の2時半、3時半、4時半の三回ガイドツアーが行われる。学芸員はアソーレス諸島やサン・ミゲル島の成り立ち、火山が生み出す様々な種類の石、世界中から集めた鉱物や宝石、化石などを解説してくれる。この日の2時半の回の客は私一人なので、色々質問したり、展示物をじっくり見ることができた。アソーレス諸島に旅行するようになって、地理や地学に興味を持てるようになった。中学生や高校生の頃だったら尚良かったのになあ。

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フルナスに戻り、また温泉を楽しんだ。夜はこれまた地元の家族連れやカップルが多い。住民は年間パスでも持っているのだろうか?毎日4€の入浴料は家計に大きいと思うが。お風呂はみな石で出来ていて、もちろん源泉掛け流し。お湯は透明だが、かなり鉄分を含んでいて、石の隙間や川底は沈殿した酸化鉄で赤く染まっていて、真っ白いタオルや薄い色の水着は染みがつく恐れがある。なおタオルは温泉で2€で借りることもできるし、水着も売っている。

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最初のお風呂は「瞑想の湯」深さ130cm、私が立つと頭から下が全部お湯に浸かる。水温は39度。次は「静穏の湯」深さは90cmほどで段差があり、掛けて腰湯に浸かることもでき、肩まで沈むこともできる。「河岸の湯」は山から流れて来る水と温泉の湯の混じったお風呂で水温は28度。「テルマエの集い」は浴槽の段差が3つあり、小さな子供も大人も一緒に入ることができる。またこの浴槽は滝がなく体に負担がかからない。「神話の湯」は浴槽の一辺が滝のカーテンになり、全身を優しくマッサージすることができる。それぞれの浴槽の底は沈殿物や小石でヌルヌルザラザラするが、海水浴の一つのバリエーションと思って我慢。お風呂の後はやっぱりビールが飲みたくなる。アソーレスの地ビール「エスペシャル」で乾杯!

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イケメンや美女と混浴できます。


by caldoverde | 2016-12-29 06:24 | ポルトガルの旅 | Comments(2)
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フルナスの朝は、村を環状に囲む山や森に霞がたなびき、まるで日本の山村のようだ。通りに出ると道の奥は特に霧が深く立ち込めている。歩いていくうちにそれは霧ではなく湯気であることに気が付いた。道路のマンホールや排水溝の隙間から白い蒸気が立ち上り、硫黄の臭いが漂う。ついに湯気の大元に行き着いた。そこには黄色がかった白い地面にいくつかの石の輪があって、輪の中からほんわか湯気が立ち上り、あるいは煮えたぎった湯が恐ろしい音と共に噴出する。そばには川が流れ、河原の至る所でもうもう湯気が吹き出している。現地ではカルデイラス(ボイラー)と呼ばれているが、日本なら地獄釜とか地獄谷と名付けられそうな場所だ。怒り狂ったように吹き上げる熱湯の泉の合間に置かれた、中世の城や聖家族やラクダに乗った東方の三博士の書き割りがなんともミスマッチだ。閻魔様や鬼の方が断然似合う。

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昔の湯治場だった小さな建物は、今は温泉に棲息する微生物を紹介する科学館となっている。髪の毛の30分の1の細さの藻のような生物や、100度を超える温泉に存在するバクテリアなどが展示されている。中には地中の350度の高温を生き延びることのできる種もあるそうで、そんなのが人類を襲ったら大変なことになる。微生物センターでは温泉の水を使ったお茶やコーヒーも飲むことができる。

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そのあと、愛車のブロンプトンでフルナス湖畔のサイクリングに出かけた。初めてフルナスにきた時は、紫陽花の綺麗な、しかし車がビュンビュンとばす国道から外れて牧場に入り、そこからぬかるんだ細い登山道を歩いて湖に出たと記憶している。あれから9年、ひょっとして起伏の少ない舗装された遊歩道やサイクリングコースができていないかと期待したが、結局同じ山道を自転車を引いて歩くことになった。峠を越えるとき、別の道から来たイギリス人らしき女性に「ユーアークレイジー」と笑われた。

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しかしその苦労は、フルナス湖畔を自転車で半周し美しい景色を大いに楽しんだことで報われた。以前来た時に温泉の地熱でコジードを作っているのを見たのはここだった。レストランの立て札がつけられた砂山の下で、肉や野菜たちはじんわりと茹でられ互いの味がしみていく。水辺では鴨やガチョウのような鳥が、観光客から売店で販売している餌を貰っている。もう家禽化しているので、こいつらも温泉で茹でたら美味いのでは…と不謹慎ながら思った。

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コジードを作る温泉から湖沿いに5km位先にある、フルナス湖自然保護観察センターを訪れた。近年は牧場が原因の水質の富栄養化や、外来植物の繁殖が問題になっているので、フルナス湖を本来の姿に戻すのがセンターの目標である。観光や農業の振興と自然保護をいかに調和させるかが、アソーレスの大きな課題である。格安航空会社の就航に伴い大幅に観光客が増えたのは良いが、観光開発が自然を破壊しては本末転倒だ。今のうちにアソーレスに行けと警告する旅行サイトもある。ブームになる前に(もうなっているかもしれないが)是非とも訪れるべき場所だ。

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ようやく前日食べたコジードが1日半かかって消化された。夕食は同じ店「Tony's」でカサガイのグリルとアブロテイアという白身の魚のフライを食べた。アブロテイアはサン・ミゲル島ではよく食べられる魚で、鱈系の癖のないあっさりした味だ。飲み物はモランゲイロ(イチゴワイン)。酸味が強く、やや濁った、イチゴの香りのするワインははっきり言ってそんなに美味しいものではないが、地酒ということでアソーレスに来たら一度は飲んでみるのも良いだろう。

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by caldoverde | 2016-12-27 03:40 | ポルトガルの旅 | Comments(0)
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フローレス島からコルヴォ島を望む

 今年で四度目となるアソーレス諸島への旅は、諸島最西端にしてヨーロッパの最西端フローレス島とその北にあるアソーレス最小の島コルヴォ島を目指した。
 今回はINATELという会員制リゾートクラブのような共済組合のような団体の主催するツアーに参加した。フローレス島4泊5日航空券+ホテル+二食でツインルーム一人380ユーロより。今年も連れの調達は間に合わなかったので割高のおひとりさまとなったが、それでも航空券やホテルを自分で手配するよりはかなり安い。しかも朝食と夕食が付いている。中身は何もないのでホテルでのんびりするもよし、マリンスポーツやトレッキングを楽しむもよし、コルヴォ島の1日観光に参加するもよしといったフレキシブルなツアーである。

 空港で初顔合わせをした参加者は熟年女性4人組とリタイアした夫婦1組と私の7人。私以外は皆ポルトガル人である。日本では奥様達のグループ旅行は別に珍しくないが、ポルトガルではちょっと変わっているかも。どうも離婚したか、夫に先立たれたかで今はシングルの女性の集まりのようだ。大阪のおばちゃんのごとくパワー全開である。ここで既に最果ての島への旅でロマンスが生まれる可能性はがっくり下がった。

 朝6時半のエアバスでリスボンからサン・ミゲル島に向かい、そこからボンバルディア機に乗り継いでフローレス島に10時半頃に到着するはずだったが、出発日にアソーレス航空SATAがストライキを行い、1日目はフローレス島行きの飛行機が飛ばず、経由地のサン・ミゲル島で1泊を過ごすこととなった。SATAは、ストで予定変更を余儀なくされた私達に、ポンタ・デルガーダのホテルと昼食と夕食を提供した。ホテルはザ・リンス(山猫)という名前になっているが、古い地図ではホリディ・インとなっている。

マリーナが整備されてだいぶ洗練されたポンタ・デルガーダの海岸沿い
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 もとアメリカ系のホテルのレストランの食事ということで、特に期待はしていなかったが、意外に郷土色が豊かである。昼のメニューはカツオ系の魚のグリル。あっさり塩味で大変懐かしい味。味噌や醤油をつけて焼いて生姜を添えたら、最高の日本食になりそう。
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デザートはカスタードクリームタルトとチーズケーキの中間のようなお菓子。
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 夜はアソーレス料理のビュッフェ。サン・ミゲル島の料理はポルトガルの四川料理と言うべきか、ピーマンの塩漬けや唐辛子を使ったピリカラ味でチョリソやブラッドソーセージも唐辛子のアクセントが利いている。シシャーロスという小魚の南蛮漬けは最高!
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バカリャウ(干鱈)のフライもピメントとトマトのソースで味付けされている。付け合せにサツマイモとピメントを使ったアソルダ(パン粥)
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豚肉の煮込み、ベークドビーンズ、鶏手羽の唐揚げは止められない止まらない危険な味だ。
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デザートはこの島名産の紅茶を使った紅茶のプリン、豆のケーキ、島の特産パイナップルのケーキ。
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 この日の夜はマリーナに設けられたイベント会場で、現在海外ツアーで集客できるほとんど唯一のファド歌手、マリーザのコンサートが行われた。わずか5ユーロでマリーザの生の声が聴けるのはめったにないチャンスである。モデルのような長身、ベリーショートのブロンド、エキゾチックな顔立ちのマリーザは、ポルトガル人の父とモザンビーク人の母との間に、当時ポルトガルの海外領だったモザンビークで1973年に生まれ、3歳でリスボンに移住。幼いころから父の経営するレストランなどで歌っていたという彼女は、アマリア・ロドリゲス亡き後のファド新世代のホープ。パワフルな歌唱とスタイリッシュなルックスで演歌のイメージのファドを格好いいワールドミュージックに変身させた。昨年は日本でもコンサートを行った。

最近のヒット曲「白いバラ」のプロモーションヴィデオ

by caldoverde | 2010-07-12 07:27 | ポルトガルの旅 | Comments(2)
 ポルトガルを旅行するときは英語で書かれたガイドブックを参考にすることが多い。ポルトガル語による詳細な案内書は非常に少ない。例えばポルトガル語のガイドやサイトでここに行くにはどんな交通手段があるか調べようとすると、国道○号線をどこ方面に向かって進む。としか書いていない。国民全員が車を持っているという前提で書かれている。私のように車どころか免許も持たない人をはなから対象にしていない。ところが外国語で書かれた本はバックパッカー向けのものが多いので、駅やバスターミナルは町のどの辺にあり、1日に何本この方面の便がある、と言うふうにとても実用的に書かれている。ホテルの情報も五ツ星から素泊まり専用の安宿まで範囲は広く、コストパフォーマンスのいいところははっきりと勧めている。無駄なお金は払いたくないという実利的な精神が反映されている。しかしレストランの評価は疑問に思うことが時々ある。アメリカ人もイギリス人もグルメとは思えないし、英語のガイドブックで美味しいと書いてあるのは本当に信用できるんだろうか?

 ポンタ・デルガーダの中心部を歩くと色んなレストランがある。何か珍しいもの、土地のものが食べたいとも思うが、ここはリスボンで食べたトカゲステーキの本場でもあるので、とりあえずガイドブックの推薦する、地元のステーキのうまい店人気投票で1位を獲得したという店に行ってみることにした。ところが店は満員で入り口に立って待っている人たちがいる。同じ本を読んできたのか、大部分は英米系の人たちである。仕方ないので向かいのレストランを覗くとまだ席があるし、メニューに変わったものがあるので、こちらに入ることにした。

 アソーレスの食べ物は基本的には大陸のポルトガルと料理の仕方などは変わりないが、材料が違う。特に魚はリスボンでは聞いたことや見たことがないようなものが多い。向かいの店の本日の魚料理のリストに、私の心をがっちり捉えたメニューがあった。Caldeirada de Congro 穴子のシチューである。穴子!寿司ネタで一番好きなのは穴子である。穴子のないポルトガルの寿司屋なんて私には価値がない。穴子巻きや穴子丼や穴子のてんぷらを知らないで日本料理を語るポルトガル人はかわいそうだ。そう思っていたら実は今回ポルトガルにも穴子があることを初めて確認した。しかしリスボンのレストランでは見たことがない。ポルトガル人は穴子のうまさを知らない。穴子のとろけるような舌触り、淡白な味に思いをはせ、期待に胸を膨らませながら、穴子のシチューとアソーレスのピコ島産の白ワインを注文した。
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 シチューが運ばれてきた。あ、穴子はいったいどれなんだ?この魚の切り身が??皿には輪切りにしたジャガイモが数枚重なり、その隣に芋よりも大きな差し渡し15cm厚さ1cmくらいの白身魚の輪切りが無造作によそわれている。穴子と言えばウナギより小ぶりの、細長い魚と心得ていたが、この切り身から想像するに、長さが2mぐらいある巨大穴子ではないかと思われる。なりが大きいと味も大味になるのではと不安もよぎったが、あら、意外と美味しい。身は淡白でくせがなく、柔らかくて骨も少ない。日本の穴子同様、とても上品だ。トマト味のブイヤベースにもとてもよく合う。芋なんかいらないからもっと穴子が食べたい。しかし残念ながら穴子の切り身は1枚だけだった。勇気を出してお替りを頼めばよかった。でも芋を食べずに魚だけもっとよこせと言うのははしたない。ピコ島の辛口白ワインがとてもよく合う。ガイドブックに載っている店の影に隠れた存在のレストランであったが、他にもウツボのフライとか、最近捕れなくなって値段が上がっているという小魚のフライとか食指をそそるものがあった。

 翌日、今度こそステーキが評判の店に行こうと早めにレストランに着いたら、休業日であった。仕方がないので他の店を探すことにした。見覚えのある名前の店があった。これもガイドブックに載っていた店である。では一応信用できるだろう。地元牛のステーキ、Lagartoを注文した。16ユーロと高いので、またそれほど食べられないと思ったので、半人前の小さいのにしてくれるよう頼んだ。付け合せはフライドポテトではなくブロッコリをお願いした。
 ところが、残念ながらこの店ははずれであった。肉は不味くはないが硬い。切るのにかなり力が入った。焼き加減はミディアム・レアだが、肉を切った断面の色が良くない。黒っぽい赤色で生きの悪そうな色なのだ。もっと良くないのは、付け合せのブロッコリがいつ茹でたのかわからないような、新鮮さの全く感じらないものだったことだ。野菜でビタミンを補給するのは諦めた。正直言ってこれなら、危険を冒して飛行機でサン・ミゲル島まで来るまでもなく、リスボンのアソーレスレストランで食べたほうがよっぽど美味しい。値段も変わらない。参考までに、リスボンで食べたトカゲステーキ(4月20日の日記)と、この写真を比較して見てほしい。英語のガイドブックのレストラン情報はあまり当てにならないと感じた次第である。
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by caldoverde | 2007-08-19 06:43 | ポルトガルの旅 | Comments(6)