ポルトガルの食べ物、生活、観光情報


by caldoverde
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食は辺境にあり

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 リスボンから車で約3時間の山あいの小さな町トンデラから、更に山に向かうくねくね曲った街道を登って行くと、キンタ・デ・ビスポスと言うファームホテルがある。見晴しの良い斜面には可愛い白いコテージが 5、6棟あり、その間にラランジャル(オレンジ畑) というレストランがある。太い松の梁が支える広々とした空間、大きくとったガラス窓からはトンデラの町と雪を抱くエストレラ山脈が見える。すばらしい眺めを見ながらの食事は、リスボンの中心部のホテルのレストランと比べても見劣りしない充実した内容と味である。
              ↓この白い線が雪です
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 給仕は、あいにくオリーブを切らしております、と申し訳なさそうに言いながらパンを運んで来た。ポルトガルではどんな安食堂も高級レストランもお通しはパン、バター、オリーブの実の3点セットが基本である。おそらく自家製のオリーブの漬物を出すはずだったがストックがなくなってしまったのだろう。しかし4種類のパンに手作り風ハーブ入りバターとツナペーストは前菜として十分な量。どれも試さずにはいられない。もしオリーブもあったら料理が来る前にワインが空になり、お腹の空きスペースはかなり少なくなっていたはずだ。この地方のワインは檀一雄の愛したダンワイン。代表的な銘柄は「キンタ・デ・カブリス」、スーパーで3~4ユーロで買える大衆的なものであるが、産地で飲むとなんとなく味がグレードアップしたように感じる。

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 この地方の代表的な料理は「タコのオーブン焼き(ポルヴォ・ア・ラガレイラ)」だそうだ。こんな海から離れた場所でタコ料理?と不思議に思われるが、名物をはずす訳にはいかない。リスボンでタコを注文するとイカの足みたいな細いのが出てくることもあるが、これは刺身にできそうな立派なものだ。どうせ冷凍だろうとさほど期待せず食べてみると、食べやすい柔らかさながらプリッとした弾力があり、とてもジューシーである。付け合せは海老、トウモロコシパンに色とりどりの野菜を混ぜたそぼろ、オーブンで焼いた皮付きジャガイモ、と見た目も楽しく様々な食感が楽しめる。

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 このベイラ地方の郷土料理としては山羊肉をじっくりとワインで煮込んだシチュー 「シャンファナ」が有名だが、オーダーは二人前から。これだけで満腹必至である。色々な料理を試してみるという我々のミッションを遂行するため選ばれたのは仔山羊のオーブン焼き。山羊や羊は臭いがあるのではという先入観が頭をよぎるが、この仔山羊のローストは下味に何のスパイス(カルダモンかナツメグ?)が使われているのか、爽やかな香りが感じられる。肉には脂肪がたっぷり乗っているが、この下味のおかげでそれほどしつこさ油っこさが感じられず、とても美味しい。付け合せは鮮やかな青菜の炒め物と皮付きジャガイモ。バターのような甘みのある青菜と肉汁の絡んだジャガイモは山羊と互角のうまさ。

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 ラムのはちみつマスタードソースなどという洒落たものもある。ポルトガル料理はトマトやニンニクで味つけしたものが多いので珍しい。九本もの骨付きのラム肉が辛うじて繋がっている状態で切れ目を入れられ、ピンクの断面をチラッと覗かせている。肉はとても柔らかく、羊臭さは全く感じられない。牛肉よりもクセがなく、あっさりした上品な味だ。西洋・中近東の宗教的な儀式やお祭りのごちそうは羊。羊と共に長い歴史歩んできた彼らは羊を美味しく料理する術を知っている。

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 楽しい食事の締めくくりは自家製ママレードを使ったパイと、フォンダンショコラ・アイスクリーム添え。庭のオレンジから作ったママレードは甘さ控えめの自然風味でパイ皮も薄く軽く油っこさを感じさせず、たらふく食べた後のデザートへの罪悪感を和らげてくれる。天使と悪魔のコンビ、フォンダンショコラとアイスは明日からのダイエットへの新たなモチベーションと、食後約10時間は補充の必要がない十分なカロリー供給を約束する。
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 小さな田舎町の更にはずれの山の中にあるファームレストランは、都会の有名シェフのレストランにひけをとらないような良質の味を田舎の値段で提供してくれる。しかしここまで来るのにリスボンから幹線高速道路を2時間、カーブの多い山中のトラック街道を1時間、途中地元の人に道を尋ねること三度という長い道のりであった。付近にカラムーロというミネラルウォーターと温泉で有名な町があるので、コインブラからそこを目指したほうが分りやすいだろう。カラムーロには行ったことがないが、クラシックカーの博物館があるらしい。車とドライブが好きな方には楽しい旅になると思う。

http://www.quintadebispos.com/
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by caldoverde | 2010-04-15 07:11 | ポルトガルの旅 | Comments(4)

ヤギと羊

 大学の町コインブラの郷土料理にシャンファナというヤギのシチューがある。ヤギの肉を赤ワインで煮込んだもので、黒い陶器の器でサービスされる。黒い土鍋に入った黒いシチュー。なんだかヤギの頭を持つサタンが執り行う黒ミサで悪魔の崇拝者たちが食べるご馳走のようである。この料理も決して見栄えのいいものではないが、見かけよりずっと美味しい。土鍋でじっくりと煮るので肉は柔らかく、想像するような臭みは全然ない。
 
 アレンテージョ地方には羊のシチュー、エンソパーダ・デ・ボレーゴがある。この地方は黒豚が有名だが、羊も沢山飼われている。羊は乳、毛、皮、肉と生まれてから死ぬまで人間に多大な貢献をしている。アレンテージョの羊飼いは羊の毛皮で作った上着を着る。この姿を羊たちはどう思っているのだろうか。自分たちを屠り皮をはぐ恐ろしい支配者、それとも自分たちと同じ毛皮を着ている仲間だと親近感を抱いているのだろうか。きっと後者だろう。アレンテージョの人たちはのんびり屋でよく冗談の種にされる、羊のように穏やかな人々だ。彼らは手塩にかけて育てた羊が食卓に上るとき、こいつはいいやつだったなあ、呼ぶとすぐにやって来たもんだ。毛を刈るときは暴れたが、その毛は玄関の敷物になっていつもオラを迎えてくれる・・・などと思い出を語りながら舌鼓を打っているに違いない。(多分)
 慎ましい暮らしのアレンテージョの人々は、少ない肉でも家族全員の胃袋を十分に満たすように工夫した。羊のシチューの具の半分を占めているのは揚げたパンである。この地方独特の、もっちりした拳骨のような形のパンをスライスして揚げた、巨大なクルトンが羊肉よりもその存在を主張している。上げ底だ、騙されたと怒らないで欲しい。肉やトマト、玉ねぎなどの野菜のうまみが凝縮されたスープを吸った揚げパン、これがうま~いのだ。肉も美味しいけど、私はパンのほうが好きなくらいである。
 羊の独特の臭いが嫌いだという人もいる。しかしほろほろと崩れるくらい柔らかく煮込んだ羊肉シチューはコリアンダーやミントをあしらって香りのアクセントをつけているので、臭いはそれほど気にならない。
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羊肉の下にはベッドのマットレスのように揚げパンが敷かれている。緑の葉っぱはコリアンダー。

 羊料理に合うのはやはりアレンテージョの赤ワイン。アレンテージョは良質のワインを生産していることでも名高い。エヴォラ、エストレモス、レゲンゴス、ボルバ、ポルタレグレなどの町には幾つものワイナリーがあってピンからキリまでの値段の、しかしどれもそれなりに美味しく飲めるワインを造っている。アレンテージョのワインは軽快で甘みを感じる飲み易いワインだ。高いものは重くコクがあるが、私はぐいぐい飲める安いもののほうが好きだ。私は食べるのは好きだが美食家ではない。食費に出せる金額には限界がある。少ない予算の中で旨いものを食べるということが最重要課題である。そして安くても旨いものに出会える機会の多いのがポルトガルである。特にポルトガルのワインは値段の割りに良質だと思う。
 ワインを選ぶ目安のひとつはラベルに醸造業者の名前があるかどうかである。自分の名前を出すくらいならそれだけ自信があるんだろうというやや薄弱な根拠である。しかし、この人が造っているワインならほぼ間違いないと思われるのは、JOÃO PORTUGAL RAMOS という醸造業者による、アレンテージョのワインである。ボルバのMARQUES DE BORBA や、エストレモスの LOIOS などの銘柄を手がけている。値段もスーパーで買えば6ユーロ程度の手ごろな値段である。もっとも普段は2~3ユーロのワイン愛飲者の私にとって、これらは臨時収入が入って奮発するときだけに買う贅沢品であるが。
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by caldoverde | 2007-09-26 07:23 | 肉料理 | Comments(4)